小局からのお知らせ

「第4回 法政大学出版局学術図書刊行助成」
選考結果のお知らせ

法政大学出版局では、2014年より「法政大学出版局学術図書刊行助成制度」を設け、全国の各大学在職の研究者および民間研究者を対象に、優れた学術的価値を有する専門的研究成果の募集を行っております。

2017年も、春に第4回目の募集を行い、局内および小局理事会における厳正な審査と、外部の審査員による評価を経て、本年度は下記の3点の論文作品を刊行助成対象とすることに決定いたしました。

(1)
著者:網谷壮介 氏
論文:『イマヌエル・カントと18世紀末プロイセンの「理論と実践」論争』

《選考理由》
「独創性、論証の精度・説得性、構成、理論的含意のいずれにおいても、一般的な学術書に求められる水準を超える力作。理想主義的な非政治的哲学者というこれまでのカント像を刷新して、政治思想家として解釈すべきカント思想の一側面を説得的に示している。これまで独特な専門用語によって論述され、難解な印象があったカントの思想を、平易な用語と明快な論理によって説明しているという利点もある。」

(2)
著者:賀茂道子 氏
論文:『ウォー・ギルト・プログラム──「戦争の有罪性」とは何か』

《選考理由》
「対日占領期における米国の「ウォー・ギルト・プログラム」の全容を、戦時の対日心理作戦にまで遡って明らかにした最初の研究として学術的価値が高い。「プログラム」の立案・履行組織であったCIE(占領軍総司令部民間情報教育局)文書ばかりでなく、同局長や同局企画作戦課長が占領以前に著わした論稿、さらには「プログラム」の実施対象であった占領下の日本人の日記などを読み込んでいる点も占領史研究の論文として高く評価してよい。」

(3)
著者:小田切建太郎 氏
論文:『中動態・地平・竈──ハイデガーの存在の思索をめぐる精神史的現象学』

《選考理由》
「ハイデガーの初期から後期までの思索を現象学的哲学として通覧する堅実な研究に、「中動態」および「竈」という斬新な視点からの捉え直しを組み合わせた野心的な論考。解釈のディテールには異論もありえようが、篤実な読解の積み重ねと挑戦的な視点からの考察を説得的に照応させる力量は、称賛に値する。」

書籍としての刊行は、2018年春〜夏を予定しております。
このほか、多数の力作論文のご応募をいただきましたが、残念ながら今回はご期待に添うことができませんでした。ご応募いただきましたすべての皆さまに、心より感謝を申し上げます。

なお、次年度以降も引きつづき、本「刊行助成制度」を実施してまいります。2018年3月下旬以降に、当ウェブサイト上にて詳細を告知する予定ですので(締め切りは5月末)、積極的なご応募をお待ちしております。

2017年11月1日 一般財団法人 法政大学出版局