叢書・ウニベルシタス 1039
哲学的急進主義の成立 Ⅲ
哲学的急進主義

第53回 日本翻訳出版文化賞受賞
四六判 / 588ページ / 上製 / 定価:9,000円 + 税 
ISBN978-4-588-01039-2 C1310 [2016年12月 刊行]

内容紹介

1820年頃の最大幸福主義を論じる最終巻では、リカードゥの経済理論やベンサムの司法・国家組織論が分析されるとともに、有益性の理論がイングランドの普遍的な哲学となり、言論・議会活動を通じた急進的改革の推進力となる時代が扱われる。現代的視点からみたPh.モンジャンの解説、アレヴィ小伝、著作目録や手紙などの資料に加え、訳者による総括的なあとがきを収録。全巻いよいよ完結!

著訳者プロフィール

エリー・アレヴィ(アレヴィ エリー)

(Élie Halévy, 1870–1937)
1889年高等師範学校に入学,理想主義哲学者A.ダルリュ教授の薫陶を受ける。1892年に卒業後,友人とともに翌年『形而上学と道徳評論』を創刊,生涯その運営に携わる。学生時代には第三共和制の三大事件(ブーランジェ事件,パナマ事件,ドレフュス事件)を経験し,金銭スキャンダル,対独復讐心,ユダヤ人差別というフランス社会の病弊と腐敗からの道徳的再生を終生の課題とした。1893年,フランスの主要官僚養成学校である政治学高等専門学校(通称シアンスポ,現パリ政治学院)教授に就任。この学校で40年余にわたってブリテン経済学史と社会主義史を講じた。ソルボンヌは二度にわたってアレヴィを教授として迎えようとしたが,実践哲学を重視する彼は動こうとしなかった。主要著作に,『プラトンの科学理論』(1896年),『哲学的急進主義の成立』(1901–1904年),『トマス・ホジスキン(1787–1869)』(1903年),『ブリテンとその帝国』(1905年),『19世紀イングランド国民の歴史』(1912–1932年)などがある。

永井 義雄(ナガイ ヨシオ)

1931年愛知県生まれ。1954年名古屋大学経済学部卒業,1959年同大学院博士課程満了。金沢大学,名古屋大学,一橋大学,関東学院大学教授を歴任。経済学史・社会思想史専攻。経済学博士,名古屋大学名誉教授。『イギリス急進主義の研究』(御茶の水書房)ほか著書,編著書,訳書がある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

まえがき

第一章 経済社会の自然法則

Ⅰ リカードゥ
リカードゥの経済学研究の二重の起源、彼の経済哲学の二重の性格、静態的法則と動態的法則/静態的観点、価値論/楽観主義に対する諸制約、労働の法則、労働の質の多様性、独占価格、市場価格の変動/攪乱的作用の影響を無視するリカードゥの傾向/自由貿易と外国貿易論/動態的観点、地代論/賃金の法則/利潤の法則/利潤と賃金、リカードゥと最初の社会主義者たち/利潤の低落/資本の耐久性と価値/理論と時代/自由放任の政策/課税、特に地代に対する課税の問題/議会におけるリカードゥ、楽観的演説/リカードゥにおいて楽観主義が悲観主義に打ち勝っている理由

Ⅱ ジェイムズ・ミルとマカロク
ジェイムズ・ミルとマカロク/価値論、リカードゥに対するトレンズの反対論およびマカロクの回答/マルサスの反対論、リカードゥの困惑/トレンズ、反論を繰り返す、ジェイムズ・ミルの回答/マカロクの理論/リカードゥの失望、彼の死/ジェイムズ・ミルとドゥ・クィンシー/ベイリの反対論/マカロクとジェイムズ・ミル/富の分配の理論/第一、ジェイムズ・ミルにおける/地代の法則、賃金の法則/マルサス主義の新しい例証/利潤の法則/資本の増大を人為的に加速することは不可能であること、課税の問題/人口増加を人為的に低下させることの必要性/ジェイムズ・ミルとフランシス・プレイスとの新マルサス主義/平等主義に対するベンサム主義者たちの反対論/第二、マカロク。楽観主義の傾向/マカロクの地代論/産業革命と新しい経済哲学

第二章 司法組織と国家組織

Ⅰ 手続法と司法組織
手続法。直接および間接の目的/人為的〔専門的〕制度と自然的制度、ベンサムとモンテスキュー/手続について。特別の訴答書面の批判、要約的手続き/証拠について、排除原理の批判、最後の頼みの証拠の承認、情況証拠の承認/排除原理の起源/宗教的形式の批判/証拠の普遍的承認の原理に対する制限/これらの事柄における自由主義的偏見の批判、「何人も自己を告訴する義務なし」 〔ウィンゲイト、箴言四八六〕という規則の批判、「唯一人の証人は証人が無いに等しい」という規則の批判/司法組織について/手数料支払の批判、法廷分割の論理的原理の批判、判事の複数制の批判/上訴について/陪審制について、準陪審制/公判の公開について

Ⅱ 憲 法〔統治機関法〕
『憲法〔統治機関法〕典』の起草/ベンサム政治哲学の三原則/公職者の適正を極大化する手段/自由主義的先入見、『権利宣言』の批判、権力分割原理の批判/多数者の権利/統治者の法的責任の組織/一院制/大臣および公務員の任命/競売の機能/ベンサムの共和主義/ベンサムによる普通選挙の理論/リカードゥの急進主義/ベンサム体系に対するマキントッシュの反対論/ジェイムズ・ミルの『統治』/ジェイムズ・ミルの権力分割理論/ジェイムズ・ミルの日和見主義/ジェイムズ・ミルによる選挙権の理論。利益代表制の批判/ジョージ・グロート。ジョージ・グロートおよびジェイムズ・ミルの無記名投票論/ベンサム主義者たちの急進主義のブルジョア的性格/ベンサム主義者たちと地方行政改革/ベンサムによる『純粋代議制民主主義』

第三章 思想の法則と行政の規則

Ⅰ 知 識
イングランドにおける哲学作品の不振/フランス哲学、およびドイツ哲学/最大幸福主義者たちの間におけるハートリの伝統の持続、ジェイムズ・ミルに対する影響/エラズマス・ダーウィンの『ゾウアノミー』/ハートリからジェイムズ・ミルにいたる肉体的感覚の理論の歴史と意義/ホーン・トゥクの『パーリーの閑談』/ホーン・トゥクおよびジェイムズ・ミルによる抽象の理論/トマス・ブラウンおよびジェイムズ・ミルにおける化学と精神的綜合の概念/ベンサムの影響および一八一五年から一八二九年にいたるジェイムズ・ミルの労苦/トマス・ブラウンおよびジェイムズ・ミルによる心理学上の説明の理論および仮説/心理学における自然法則の単純性の原理について、ジェイムズ・ミルの経験主義と合理主義

Ⅱ 行 動
ベンサムとジェイムズ・ミルの理論研究の実践的対象/ベンサムとジェイムズ・ミル、方法ならびに前提の相違/ベンサムとジェイムズ・ミルの意図論、動機論、ジェイムズ・ミルはベンサム的動機分類をいかに単純化しているか、心理学から道徳論への道程/利害融合の原理による道徳問題の解決、ベンサムおよびジェイムズ・ミルによるその否定、彼らの個人主義、道徳問題の解決としての、無私の感情の熟慮された開拓、この解決がベンサムおよびジェイムズ・ミルにより否定される理由/道徳問題を解決するものとしての、共感の必然的進歩の仮説、この解決がベンサムおよびジェイムズ・ミルにより否定される理由/利己主義の道徳性、ジェイムズ・ミルおよびベンサムにおける四つの徳性の理論/最大幸福主義者たちの道徳は彼らの経済心理を命令形にしたものである

終わりにあたって

ベンサムの死/彼のグループ/幸福主義協会/宣伝、ロンドン大学、『ウェストミンスター評論』/マコーリの攻撃、およびマキントッシュの攻撃/理論の要約、利害の自然的一致と利害の人為的一致との二原理の規則、これら二原理の調停の試み/合理主義、批判的検討/個人主義、批判的検討/ベンサム理論の影響、司法改革に関して、植民政策に関して、政治改革および行政改革に関して、経済改革に関して/「ウェストミンスター哲学」がいかにして「マンチェスター哲学」の勝利のうちに消滅するか


文献目録

初期最大幸福主義と経済理論の展開 (フィリップ・モンジャン)
付録 ベンサムの著作に対する注の改訂 (メアリ・ソコル)

資料1 エリー・アレヴィの伝記 (アンリエット・ギ‐ローエ)
資料2 エリー・アレヴィ著作目録
資料3 『哲学的急進主義の成立』をめぐって (アンリエット・ギ‐ローエ)
資料4 エリー・アレヴィの手紙
資料5 レズリー・スティーヴンとアンリ・ベルグソンの手紙

訳者あとがき (永井義雄)

全巻人名索引

関連書籍

『哲学的急進主義の成立 Ⅰ』
エリー・アレヴィ:著
『哲学的急進主義の成立 Ⅱ』
エリー・アレヴィ:著
『自律の創成』
ジェローム・B. シュナイウィンド:著
『イギリス宗教史』
シェリダン・ギリー:編
『正義のフロンティア』
マーサ・C.ヌスバウム:著
『犠牲と羨望』
J.-P.デュピュイ:著
『道徳から応用倫理へ』
ポール・リクール:著