叢書・ウニベルシタス 1079
ボーヴォワール

四六判 / 286ページ / 上製 / 価格 2,970円 (消費税 270円) 
ISBN978-4-588-01079-8 C1310 [2018年05月 刊行]

内容紹介

ボーヴォワールはその生涯と作品によって女性の解放を体現し、女性が職業につき政治に参与する権利のための人類学的=人間学的革命を起こした。近代的家族観を脱神話化し、不調和をはらみつつも自立した個々人が対話を試みる思考の場としての新たなカップル像を提示した彼女の思想を、フレンチ・フェミニズムの諸潮流と深く関わりながらときに批判的な眼差しを向けてきたクリステヴァはいかに読んだか。

著訳者プロフィール

ジュリア・クリステヴァ(クリステヴァ ジュリア)

(Julia Kristeva)
1941年、ブルガリアに生まれる。66年、パリに留学。以後は文学研究者、精神分析家、作家としてフランスに暮らす。文学の記号論的・精神分析的研究に従事するかたわら、後に伴侶となるフィリップ・ソレルス主宰の前衛雑誌『テル・ケル』、後続の『ランフィニ』に参加。バフチン、ソシュール、フロイト、ラカンらの読解を軸に、デカルト的主体の解体、意味の産出性、詩的言語の侵犯性を中核とする独自のテクスト理論を展開し、ポスト構造主義の一翼を担う。90年以降は小説の執筆もおこなうほか、障害者に関する社会運動にも身を投じている。2008年には「女性の自由のためのシモーヌ・ド・ボーヴォワール賞」の設立に際し中心的な役割を果たした。現在はパリ第7大学ほか国内外の大学の名誉教授。ホルバイン賞(2004年)、ハンナ・アーレント賞(2006年)、サン=シモン賞(2017年)を受賞。著作は世界各国で翻訳されている。日本語訳に『恐怖の権力』『初めに愛があった』『外国人』(以上、法政大学出版局刊)、『セメイオチケ』『中国の女たち』『黒い太陽』(以上、せりか書房)、『詩的言語の革命』(勁草書房)、『サムライたち』『プルースト』(以上、筑摩書房)、『斬首の光景』(みすず書房)、『ハンナ・アーレント』『メラニー・クライン』(以上、作品社)などがある。

栗脇 永翔(クリワキ ヒサト)

1988年生まれ。現在、東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻博士課程在籍。専門はフランス文学・思想。

中村 彩(ナカムラ アヤ)

1987年生まれ。現在、東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程在籍。専門はフランス文学・思想・フェミニズム。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

人類学的=人間学的革命
 「人は女に生まれるのではない、女になるのだ。」
 告白と本当の嘘
 ボーヴォワールによるシモーヌ
 基礎となった体験=実験
ボーヴォワールは、いま
 性の平等と普遍主義という神話
 男─女というカップルの見直し
 小説は何のために?
六十年後の『第二の性』
 主体と条件──どんな幸福か?
 生物学的運命と自由な実現
 超越への道
夢見るボーヴォワール
 『決算のとき』における夢
 息切れしそうな興奮の迷宮の中で
 母が逃れる、母から逃れる
 父の変身
 親密なものから政治的なものへ
ヒトは女に生まれる、しかし私は女になる
自由が可能になった──どのような代価で? シモーヌ・ド・ボーヴォワール賞
中国における女性の権利──艾曉明と郭建梅
 中国のボーヴォワール
 長い歩み
 中国の女たち
 中国的思考=体験
パキスタンにおける原理主義に抗して──マララ・ユスフザイ
女性性と聖性について
 新しい全体主義
 エルザ・カヤト──ある自由な女性
 遭遇しあうこと

 初出一覧
 解  題 革命の継承──クリステヴァによるボーヴォワール(中村 彩)
 著者紹介 模作と反抗──ジュリア・クリステヴァとともに(栗脇永翔)
 人名索引

書評掲載

「出版ニュース」(2018年7月上旬号)にて紹介されました。

「琉球新報」「京都新聞」(2018年7月1日付/雑賀恵子氏・評)にて紹介されました。

「静岡新聞」(2018年11月4日付/雑賀恵子氏・評)に紹介されました。

関連書籍

『恐怖の権力 〈新装版〉』
J.クリステヴァ:著
『初めに愛があった』
J.クリステヴァ:著
『外国人 〈新装版〉』
J.クリステヴァ:著
『イメージとしての女性』
ジルヴィア・ボーヴェンシェン:著
『吐き気』
ヴィンフリート・メニングハウス:著
『サルトル読本』
澤田 直:編