ものと人間の文化史 155
イルカ(海豚)

四六判 / 330ページ / 上製 / 価格 3,520円 (消費税 320円) 
ISBN978-4-588-21551-3 C0320 [2011年08月 刊行]

内容紹介

一方には貴重な蛋白源としての食文化の伝統があり、一方には守るべき海洋哺乳類としての保護運動がある。一方では漁業被害を引き起こす害獣とされ、一方では知性ある癒し系の動物として愛される。イルカの持つさまざまな側面を、ギリシア神話や『古事記』から全国各地の漁撈伝承にまで幅広く取材しつつ、一方的な決めつけを排して、ヒトと動物との関係はいかにあるべきかを読者に問いかける。

著訳者プロフィール

田辺 悟(タナベ サトル)

1936年神奈川県横須賀市生まれ.法政大学社会学部卒業.海村民俗学,民具学専攻.横須賀市自然博物館・人文博物館両館長,千葉経済大学教授を経て,千葉経済大学客員教授.文学博士.日本民具学会会長,文化庁文化審議会専門委員などを歴任.2008年旭日小綬章受章.著書:『海女』『網』『人魚』(ものと人間の文化史・法政大学出版局),『日本蜑人(あま)伝統の研究』(法政大学出版局・第29回柳田国男賞受賞),『近世日本蜑人伝統の研究』『伊豆相模の民具』『海浜生活の歴史と民俗』(慶友社),『潮騒の島──神島民俗誌』(光書房),『母系の島々』(太平洋学会),『現代博物館論』(暁印書館),ほか.

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

プロローグ ── イルカの世界  1

Ⅰ 先史時代のヒトとイルカ  3
  古代人とイルカ  4
  縄文時代の暮らしとイルカ  8
  イルカを祀った縄文人  12

Ⅱ 歴史の中のイルカ  17
  『古事記』にみえるイルカ  18
  『風土記』の中のイルカ  22
  「古文書」に記されたイルカ  24
  中世(室町時代)のイルカ漁  26
  『平家物語』の中のイルカ  28
  『和漢三才図会』と『本草綱目』のイルカ  31

Ⅲ 民俗の中のイルカ  35
  わが国各地のイルカ漁  36
  伊豆半島のイルカ漁  50
  イルカの供養碑・イルカ塚  73
  イルカ漁の漁具  86
  ピトゥと名護人──沖縄県名護のイルカ漁  89
  イルカの捕獲と儀礼  102

Ⅳ 文化の中のイルカ  115  
  イルカと文化史  116
  イルカのスケッチ  120
  世界最古のイルカの壁画  123
  ギリシア神話の中のイルカ  132
  イルカに乗った少年  136
  星座になったイルカ  142
  貨幣の中のイルカ  145
  都市と建物を飾るイルカ  157
  宝飾・装飾の中のイルカ  166
  実用デザインとイルカ  177

Ⅴ 自然の中のイルカ  195
  イルカの生物学  196
  イルカの生態と分布  210

Ⅵ イルカをめぐるエピソード  233
  「イルカ」の語源と由来  234
  「イルカ」という語彙の表記  235
  イルカの方言  236
  地名になったイルカ  238
  「イルカ島」のこと  239
  火伏とイルカ  239
  わが国以外のイルカ漁  242
  イルカに出合った人々  253
  幻影・イルカの国旗  268
  随筆の中のイルカ  271
  ヒトの墓標になったイルカ  273
  イルカの群れ  275
  夫婦仲の良いイルカ  280
  イルカと人魚・ウマ(馬)  282
  ゴミ箱になったイルカ  285
  イルカの集団上陸(自殺)  286
  イルカと食文化  291
  イルカの捕獲と環境問題  298

エピローグ ── イルカよ永遠に  305

引用文献・参考文献  309
あとがき  317