現代社会研究叢書 8
環境をめぐる公共圏のダイナミズム

A5判 / 324ページ / 上製 / 定価:4,800円 + 税 
ISBN978-4-588-60258-0 C3330 [2012年07月 刊行]

内容紹介

公共圏における熟議はいかにして成立し、それはどのようなダイナミズムを示すのか、熟議を経た後にいかなる政策が実現可能なのか、問題解決のために社会運動はどのような貢献を果たしうるのか。本書は、人間社会の自己破壊ともいうべき環境問題とそれを解決しようとする環境政策や社会運動を、公共性・公共圏の「作り方」という視角から日本と世界の具体的な事例をもとに検証する。

著訳者プロフィール

池田 寛二(イケダ カンジ)

1952年生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科社会学専攻博士課程中退。2003年博士(社会学)。千葉大学文学部、日本大学生物資源科学部等を経て、現在、法政大学社会学部・大学院公共政策研究科教授。専門は、環境社会学、国際環境政策学、インドネシア地域研究。
主な著書・論文に、『地球環境問題の現場検証──インドネシアに見る社会と環境のダイナミズム』(編著、八千代出版、2006年)、『グローバル化とアジア社会』(共著、東信堂、2006年)、「〈気候格差〉の真実」『現代思想』Vol.35、No.12(2007年)。

堀川 三郎(ホリカワ サブロウ)

1962年生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科後期博士課程単位取得満期退学、千葉大学助手を経て、現在、法政大学社会学部教授。専門は、環境社会学、都市社会学。
主な著書・論文に、環境総合年表編集委員会編『環境総合年表──日本と世界』(共編著、すいれん舎、2010年)、「戦後日本の社会学的環境問題研究の軌跡──環境社会学の制度化と今後の課題」『環境社会学研究』第5号(1999年)、「場所と空間の社会学──都市空間の保存運動は何を意味するのか」『社会学評論』第60巻第4号(2010年)。

長谷部 俊治(ハセベ トシハル)

1951年生まれ。現在、法政大学社会学部教授。専門は、行政法、国土・都市・地域政策。
主な著書・論文に、『地域整備の転換期──国土・都市・地域の政策の方向』(大成出版社、2005年)、『持続可能性の危機──地震・津波・原発事故災害に向き合って』(共編著、御茶の水書房、2012年)、「環境法の変容──公害対策から環境制御ルールへ」『社会志林』Vol.57、No.3(2010年)。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 規範の深度──環境と公共圏を論じるために(池田寛二・堀川三郎)
1 50年前の問いかけ
2 公共圏と新しい想像力
3 環境問題と規範理論──本書のねらいと特徴
4 規範の深度──本書の構成

第Ⅰ部 総論:公共圏とその規範問題

第1章 環境制御システムの介入深化の含意と条件──循環と公共圏の視点から(舩橋晴俊)
1 理論的視点の整理
2 公害問題の解決──A段階からB・C段階へ
3 環境配慮の中枢的内部化──C段階からD段階へ
4 おわりに

第2章 多義的な環境価値とその保全──私権制限からみる都市環境保全ルール(長谷部俊治)
1 都市環境の多義性
2 私権制限からみる都市環境の価値
3 土地所有権の制約
4 制度構築に向けた方向

第3章 社会計画としての気候変動政策と所有制度の公共的再編(池田寛二)
1 はじめに──社会政策・社会計画・気候変動政策
2 21世紀における社会計画の課題
3 現代における社会計画の主体像──グローバル化と個人化のはざまで
4 現代社会における公共性と所有制度
5 没公共的私有社会と個人化
6 現代の社会計画とサブシディアリティの原理
7 おわりに──東日本大震災と福島第一原子力発電所事故を契機に

第Ⅱ部 《開発・公害問題》期

第4章 環境問題をめぐる不確実性と解決原則──熊本水俣病問題を手がかりに(矢作友行)
1 はじめに
2 不確実性としての環境問題への基本的視点
3 熊本水俣病問題における不確実性と判断の過誤
4 不確実性下における環境問題解決の規範的原則
5 おわりに

第5章 「状況の定義」の共振がもたらす政治的機会──カネミ油症仮払金返還問題の決着過程(宇田和子)
1 はじめに
2 仮払金返還問題の発生と特例法成立
3 仮払金返還問題をめぐる「状況の定義」
4 仮払金返還問題の決着過程の示唆
5 おわりに

第6章 河川事業における科学技術をめぐるポリティクス(角 一典)
1 はじめに
2 科学技術と民主主義
3 事例の概要
4 基本高水流量をめぐる審議過程
5 考察
6 おわりに

第7章 リスク認知特性と住民合意形成──廃棄物処理施設整備を視点として(南ひかり)
1 はじめに
2 住民合意形成の新たな課題
3 環境リスクの認知特性
4 関係住民の多元化
5 よりよい合意形成に向けて
6 おわりに

第Ⅲ部 《サスティナビリティ探究》期

第8章 「近くの山の木で家をつくる運動」の形成──「ローカル・マーケットの危機」が問いかけるもの(大倉季久)
1 何が森林管理を衰退させるのか
2 持続可能な森林管理のメカニズム
3 「近くの山の木で家をつくる運動」の形成
4 「近くの山の木で家をつくる運動」の政策論的含意

第9章 ISO14001「環境マネジメントシステム」認証制度の課題(竹原裕子)
1 はじめに
2 調査手法
3 調査結果
4 ISO14001認証制度の課題

第10章 地域自然エネルギー政策・市場の形成──「政策文化」と「エージェンシー」の視点から(古屋将太)
1 はじめに
2 地域自然エネルギー政策・市場形成の潮流
3 分析枠組みの検討──「政策文化」と「エージェンシー」
4 地域自然エネルギー政策・市場形成の媒介
5 おわりに

第11章 地球環境問題に対する環境教育プログラム──デザインと計画・評価のための理論とモデル(美﨑登紀子)
1 はじめに
2 地球環境問題に対する環境教育プログラムの目標設定
3 環境教育プログラムへの行動変容理論の適用
4 環境教育プログラムの「計画と評価」──プログラム評価
5 プログラム評価と行動変容理論の統合フレーム──「PRECEDE-PROCEEDモデル」
6 おわりに

第12章 アジアにおけるインフォーマルリサイクルの環境社会学的考察(森岡佳大)
1 はじめに
2 アジア圏における資源循環の実態──問題の所在
3 受益圏・受苦圏からの現状分析
4 適正リサイクルシステム構築へ向けた政策提言
5 おわりに

 人名・事項索引
 執筆者紹介

[執筆者紹介]*印は編著者

池田 寛二(イケダ カンジ)[序章、第3章]*

堀川 三郎(ホリカワ サブロウ)[序章]*

長谷部 俊治(ハセベ トシハル)[第2章]*

舩橋 晴俊(フナバシ ハルトシ)[第1章]
1948年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程中退、東京大学文学部助手を経て、現在、法政大学社会学部教授。専門は、環境社会学、社会計画論。
主な著書に、『組織の存立構造論と両義性論──社会学理論の重層的探究』(東信堂、2010年)、『社会学をいかに学ぶか』(弘文堂、2012年)、『核燃料サイクル施設の社会学──青森県六ヶ所村』(共著、有斐閣、2012年)。

矢作 友行(ヤハギ トモユキ)[第4章]
1978年生まれ。法政大学大学院社会科学研究科政策科学専攻修士課程修了。現在、民間企業勤務。専門は、環境社会学、政策科学。
主な論文に、「不確実性下における判断の過誤──杉並病問題を事例に」『環境社会学研究』第10号(2004年)。

宇田 和子(ウダ カズコ)[第5章]
1983年生まれ。現在、法政大学大学院政策科学研究科政策科学専攻博士課程在籍、同大学サステイナビリティ研究教育機構リサーチ・アシスタント。専門は、環境社会学。
主な論文に、「カネミ油症事件の発生前史──油症事件の前提を成す事実をめぐる考察」『法政大学大学院紀要』第64号(2010年)、「カネミ油症事件における『補償制度』の特異性と欠陥──法的承認の欠如をめぐって」『社会学評論』第63巻第1号(2012年)。

角 一典(カド カズノリ)[第6章]
1971年生まれ。法政大学大学院社会科学研究科社会学専攻博士課程単位取得退学、北海道大学大学院文学研究科地域システム科学講座助手を経て、現在、北海道教育大学准教授。専門は、政治社会学。
『「政府の失敗」の社会学──整備新幹線建設と旧国鉄長期債務問題』(共編著、ハーベスト社、2001年)、『社会運動の社会学』(共著、有斐閣、2004年)、「冷熱エネルギー利用の現状と可能性──北海道沼田町と北海道美唄市の取り組みから」『環境社会学研究』第17号(2011年)。

南 ひかり(ミナミ ヒカリ)[第7章]
1954年生まれ。日本工学院専門学校公害工学科卒業、法政大学大学院政策科学研究科修士課程修了。現在、一般財団法人勤務。専門は、廃棄物行政計画。

大倉 季久(オオクラ スエヒサ)[第8章]
1976年生まれ。法政大学大学院政策科学研究科博士後期課程修了。博士(政策科学)。現在、桃山学院大学社会学部講師。専門は、経済社会学、環境社会学。
主な論文に、「林業問題の経済社会学的解明──徳島県下の林業経営者の取り組みを手がかりに」『社会学評論』第57巻第3号(2006年)、「環境社会学としての『新しい経済社会学』──デフォレステーションの比較経済社会学に向けて」『経済社会学会年報』第30号(2008年)。

竹原 裕子(タケハラ ヒロコ)[第9章]
1942年生まれ。御茶の水女子大学理学部化学科卒業、企業で研究開発業務に従事。定年退職後、法政大学大学院政策科学研究科修士課程修了。専門は、環境社会学。
主な論文に、「企業の環境経営におけるISO14001環境マネジメントシステムの意義と課題」『環境社会学研究』第13号(2007年)。

古屋 将太(フルヤ ショウタ)[第10章]
1982年生まれ。東京外国語大学外国語学部卒業、法政大学大学院政策科学研究科修士課程修了。現在、デンマーク・オールボー大学大学院博士課程在籍中、認定NPO法人環境エネルギー政策研究所研究員。専門は、地域の自然エネルギーを軸とした環境エネルギー社会論。
主な著書・論文に、『日本の難題をかたづけよう』(共著、光文社、2012年)、東日本大震災後、Synodos Journalにて「環境エネルギー社会への想像力と実践」連載。

美﨑 登紀子(ミサキ トキコ)[第11章]
1965年生まれ。アラバマ大学バーミングハム校公衆衛生大学院修士課程、法政大学大学院政策科学研究科修士課程修了。現在、森林CoC認証審査員(審査会社勤務)。

森岡 佳大(モリオカ ヨシヒロ)[第12章]
1981年生まれ。法政大学社会学部社会政策科学科卒業、早稲田大学大隈記念大学院公共経営研究科修了(公共経営修士[専門職])。現在、外資系マーケティングリサーチ会社勤務。専門は、環境政策、環境社会学。
主な論文に、「地球温暖化防止政策における環境税を中心とした経済的手法へ向けた政策提言」(第28回〔2005年度〕法政大学懸賞論文、優秀賞受賞)、「PETボトルリサイクルの構造論的分析」(第29回〔2006年度〕法政大学懸賞論文、優秀賞受賞)。

関連書籍

舩橋晴俊・他編著『規範理論の探究と公共圏の可能性』、朝井志歩著『基地騒音』