叢書・ウニベルシタス 1075
幸福の形式に関する試論
倫理学研究

四六判 / 430ページ / 上製 / 価格 5,280円 (消費税 480円) 
ISBN978-4-588-01075-0 C1310 [2018年03月 刊行]

内容紹介

幸福に関して、それが内容的に何であるかに議論が集中しがちだが、本書は幸福の「形式」という斬新な視点を打ち出し、道徳的配慮・社会的承認・政治的正当性に関する説明が依拠する善き生の形式について議論を展開する。道徳が幸福を犠牲にしているかもしれないという「幸福と道徳との緊張関係」から、凡百の幸福論を超えて、幸福についての新たな思考をもたらす。

著訳者プロフィール

マルティン・ゼール(ゼール マルティン)

(Martin SEEL)
1954年生まれ。ドイツ文学・哲学・歴史学をマールブルク大学とコンスタンツ大学で学び、»Die Kunst der Entzweiung«(「分裂の芸術」)によって哲学博士号を取得。1990年にはコンスタンツ大学に»Eine Ästhetik der Natur«(「自然美学」)を提出して教授資格を得た。1992年から1995年までハンブルク大学教授、1995年から2004年までギーセン大学教授を務め、2004年にフランクフルト大学理論哲学講座正教授に就任し、現在に至る。主な著書に、『自然美学』(加藤泰史・平山敬二 監訳、法政大学出版局)など。

高畑 祐人(タカハタ ユウト)

1961年生まれ。名古屋大学・南山大学非常勤講師。主な著作・翻訳に、「エコフェミニズムの批判的変換――自然美学的読み替えの試み」(名古屋哲学研究会編『哲学と現代』第31号、2016年)、「本質的自然資本の規範的説得力――環境経済学と環境倫理学の生産的な協働に向けての一試論」(南山大学社会倫理学研究所『社会と倫理』第29号、2014年)、加藤泰史編『大学と学問の再編成に向けて』(共著、行路社、2012年)、ゲアハルト・シェーンリッヒ「尊厳・価値・合理的な自己愛」(『思想』第1114号、2017年)、アンゲーリカ・クレプス『自然倫理学―ひとつの見取図』(共訳、みすず書房、2011年)など。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序言

第1研究 幸福と道徳との緊張関係
1-1 プラトンによる問題提起
1-2 カント、同一性なき統一
1-3 ニーチェの挫折
1-4 現代における試み
1-5 コンフリクトとしての道徳

第2研究 幸福の形式に関する試論
2-0 序論
2-1 幸福の意味
2-2 幸福に関する考察
2-3 幸福の条件
2-4 善き生の形式に向けて
2-5 善き生の内実
2-6 善き生の定数と変数
2-7 幸福と道徳

第3研究 道徳の名宛人と道徳のパートナー
3-1 承認の倫理
3-2 普遍性と平等
3-3 トゥーゲントハットならびにハーバーマスにおける非-相互的な義務
3-4 第一次の拡張
3-5 第二次の拡張
3-6 道徳の名宛人

第四研究 道徳の優位
4-1 条件つきの道徳と無条件な道徳
4-2 道徳に対する七つの異議申し立て
4-3 パスカルの賭けとの類比による議論

訳者あとがき
人名索引

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