弁証法、戦争、解読
前期デリダ思想の展開史

A5判 / 326ページ / 上製 / 価格 3,960円 (消費税 360円) 
ISBN978-4-588-15106-4 C1010 [2020年03月 刊行]

内容紹介

1950年代から70年代前半にいたる著作、論文において、デリダが一貫して取り組んでいた問題とはいかなるものであったか。弁証法的軋轢、悲劇、彷徨、解読、遊戯、そして戦争──参照軸や用語法をそのつど変えながらも、理解がさらなる理解の余地を生み、謎への応答がさらなる謎を引き起こすような解釈の経験を論じ、差延の概念を練り上げていった前期デリダの思想的展開を緻密に分析する。

著訳者プロフィール

松田 智裕(マツダ トモヒロ)

1986年生。2019年3月に立命館大学文学研究科で博士号(文学)を取得。現在、立命館大学文学部初任研究員。主な論文に「新たなものの出現としての出来事──デリダにおける出来事、偶然性、事実性をめぐって」(『フランス哲学・思想研究』第20号、日仏哲学会)、主な翻訳にマーティン・ヘグルンド『ラディカル無神論──デリダと生の時間』(共訳、法政大学出版局)がある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 論
 第一節 デリダ思想の時期区分──研究範囲
 第二節 デリダの戦争論──研究の主題
  1 デリダにおける「戦争」概念の位置
  2 「戦争」と「弁証法」
 第三節 デリダ思想の展開史──研究方法
 第四節 本書の構成

第I部 現象学、弁証法、存在論

第一章 時間と自我──初期デリダの「時間性の存在論」について
 第一節 ピカールとフランス現象学
 第二節 ピカールにおける時間の弁証法
  1 時間の画一性──ピカールのハイデガー解釈
  2 連続と非連続の統一としての時間──ピカールのフッサール解釈
 第三節 時間の弁証法と時間性の存在論
  1 超越論的観念論と時間性の存在論
  2 時間の自己疎外
   (2─1)自己現出と疎外──デリダの『時間講義』解釈
   (2─2)時間と理念──デリダの『イデーンI』解釈
 第四節 まとめ
第二章 理念の歴史──カヴァイエスのフッサール批判に対するデリダの応答について
 第一節 問題の所在
 第二節 カヴァイエスのフッサール批判
  1 フッサールの『形式論理学と超越論的論理学』
  2 『論理学と学知の理論について』におけるフッサール批判
 第三節 カヴァイエスに対するデリダの応答
  1 超越論的なものの身分
  2 目的論と弁証法
 第四節 まとめ
第三章 失敗、誤謬、誤解──デリダのフッサール「歴史の目的論」解釈
 第一節 誤りと言語
 第二節 真理、誤謬、明証
 第三節 デリダにおける「失敗」、「誤謬」、「誤解」の用法について
  1 失敗と誤謬
  2 誤解と世界への到達不可能性
 第四節 絶えざる再形成の運動としての歴史の目的論
  1 一義性と多義性
  2 理念と有限性
 第五節 まとめ

第II部 弁証法から差延へ

第四章 弁証法の行方──デリダのアルトー論における「再現前化」と「悲劇」
 第一節 問題の所在
 第二節 生とひそやかなもの
 第三節 言語、身振り、ヒエログリフ
 第四節 悲劇、再現前化、弁証法
 第五節 まとめ
第五章 彷徨、争い、差異──デリダのハイデガー解釈
 第一節 デリダにおける「彷徨」の問題
 第二節 存在の彷徨と歴史
 第三節 存在者の隠喩
  1 解体、歴史、差異
  2 隠喩と問い
 第四節 存在論的差異と差延
 第五節 まとめ──彷徨、ポレモス、そして弁証法
第六章 差延の思考──デリダにおける「遊戯」と「解読」について
 第一節 遊戯、戦争、解読
 第二節 アクセロスにおける惑星的思考と世界の遊戯
 第三節 デリダと世界の遊戯
 第四節 力の差異と存在論的差異
 第五節 解釈と古名
 第六節 まとめ
結 論

  あとがき
  文献一覧
  事項索引
  人名索引

書評掲載

「読書人」(2020年6月19日号/廣瀬浩司氏・評)に紹介されました。

「図書新聞」(2020年9月12日号/荒金直人氏・評)に紹介されました。

「表象」(15号、2021年05月20日発行/長坂真澄氏・評)に紹介されました。

関連書籍

『限界の試練』
フランソワ=ダヴィッド・セバー:著
『散種』
J.デリダ:著