交叉する文人世界
朝鮮通信使と蒹葭雅集図にみる東アジア近世

鄭敬珍:著
A5判 / 276ページ / 上製 / 価格 4,840円 (消費税 440円) 
ISBN978-4-588-32508-3 C3021 [2020年02月 刊行]

内容紹介

江戸時代に12度来日した朝鮮通信使のうち、1764年の使行では、成大中ら庶孼(ソオル)階層出身の知識人と、木村蒹葭堂ら市井の京坂知識人らが漢文筆談で交友し、その貴重な記録として《蒹葭雅集図》が生み出された。滞在中に朝鮮側の一人が日本人に殺害される重大事件が起きたにもかかわらず、彼らはなぜ相互理解を実現できたのか。文人の伝統や両国の異なる歴史的文脈から読み解く最新研究。

著訳者プロフィール

鄭敬珍(チョン ギョンジン)

1976年韓国釜山生まれ。法政大学大学院人文科学研究科日本文学(国際日本学インスティチュート)博士後期課程修了。平成28年度日本学術振興会特別研究員(DC2)。東京福祉大学留学生教育研究センター特任講師をへて、2020年度より檀国大学日本研究所HK+研究教授。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章
 《蒹葭雅集図》について
 中国の文人について
 日本の文人について
 文人の芸事について
 朝鮮の文人について
 本書の構成

第一章 「文人」の交叉──一七六四年の朝鮮通信使行と蒹葭堂会との交遊

1 一七六四年の朝鮮通信使と庶孼
 一七六四年の朝鮮通信使行について
 庶孼を読み解く
 朝鮮通信使と庶孼文人
 製述官・南玉(一七二二〜一七七〇)
 書記・成大中(一七三二〜一八〇九)
 書記・元重挙(一七一九〜一七九〇)
 書記・金仁謙(一七〇七〜一七七二)

2 庶孼文人と蒹葭堂会の交遊
 藍島での亀井南冥との出会い
 江戸に向かう前の大坂で
 帰路の大坂

3 《蒹葭雅集図》の制作をめぐって
 《蒹葭雅集図》の依頼
 《蒹葭雅集図》完成へ

第二章 「文人世界」の共有──《蒹葭雅集図》の分析から

1 別号図としての《蒹葭雅集図》
 園林・蒹葭堂
 別号図とは
 別号図としての《蒹葭雅集図》

2 《蒹葭雅集図》上の文人世界のイメージ
 《蒹葭雅集図》の後序
 《蒹葭雅集図》の絵
 《桃源図》と蒹葭堂
 《桃李園図》と蒹葭堂
 《武陵桃源図》と蒹葭堂
 《蒹葭雅集図》の詩

3 《蒹葭雅集図》の評価と成大中家の家伝
 朝鮮文人の《蒹葭雅集図》評価
 成大中と成海応の評価
 成大中家の雅集図家伝をめぐって

第三章 「文人」形成と「知」の体得

1 成大中家における家門意識と家学
 庶孼家になる以前における家門意識
 成後龍以後の成大中家の家学
 成大中の家学の継承と実践

2 近世京坂文人の「文人」形成と儒学塾
 十八世紀大坂における儒学塾
 菅甘谷の塾と文人たち
 片山北海の塾と文人たち

3 「知」の体得から「文人」形成へ
 成大中家における「知」の体得の実例
 近世大坂の儒学塾の「知」の体得の実例
 「知」の体得と「文人趣味」の獲得

第四章 「文人」を体現する──結社から隠逸まで

1 成大中と抱川での結社における諸様相
 抱川での詩社結成について
 青城詩社と科挙
 青城詩社と風流韻事

2 蒹葭堂会から混沌社へ
 「草堂会約」にみる蒹葭堂会の詩会
 混沌社の詩会
 混沌社と風流韻事

3 文人交遊、そして隠逸へ
 混沌社への移行期にみる交遊の様相
 成大中の世好を中心とする交遊
 隠逸という「文人」体現

終 章

あとがき 日韓の壁を越えること


図版出典
引用・参考文献
人名索引