近代日本の公衆浴場運動

A5判 / 320ページ / 上製 / 価格 6,380円 (消費税 580円) 
ISBN978-4-588-32603-5 C3021 [2016年08月 刊行]

内容紹介

江戸時代に庶民の社交場として隆盛をきわめた湯屋は、開港を経て、明治・大正期に行政が主導する保健衛生施設へと変貌を遂げた。都市労働者慰安のための浴場、細民教化のための浴場、被差別部落改善のための浴場、そして震災罹災者救済のための浴場、日本が近代国家に生まれ変わるための都市政策として営まれたさまざまな浴場をつうじてみる衛生と統治権力の関係史。

著訳者プロフィール

川端 美季(カワバタ ミキ)

1980年生まれ。立命館大学先端総合学術研究科博士課程修了。公衆衛生史。現在、立命館大学衣笠総合研究機構専門研究員。主な論文に「明治・大正期における公衆浴場をめぐる言説の変容──衛生・社会事業の観点から」(『立命館人間科学研究』No. 21、通巻37号、2010年)、「Public Bath Movementと近代日本の公設浴場設立──身体観・道徳観に注目して」(『生命倫理』Vol. 25 No.1、通巻26号、2015年、日本生命倫理学会若手論文奨励賞受賞)。共編著に『障害学国際セミナー2012──日本と韓国における障害と病をめぐる議論』(生存学研究センター報告20、生活書院、2013年)。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章
  研究の目的及び背景
  先行研究
  日本における先行研究
  本研究の構成
第一章 湯屋の法規制の変遷──江戸期から明治期を中心に
 第一節 明治期以前の湯屋の概要
 第二節 男女混浴と裸体に対する欧米人のまなざし
 第三節 明治期の湯屋──法規制の整備
 第四節 湯屋の管理背景
 第五節 湯屋の規制──小括
第二章 清潔にする場としての浴場──衛生的側面の導入
 第一節 江戸期の養生書にみる湯屋及び入浴
 第二節 明治初期から後期における入浴の関心──江戸期からの連続性
 第三節 『大日本私立衛生会雑誌』の創刊
 第四節 入浴の衛生上の意義──「入浴好きな日本人」の登場
 第五節 家庭衛生における入浴
 第六節 病気伝播の媒体としての浴場
 第七節 浴場の改良から「公設浴場」へ──小括
第三章 社会事業としての公衆浴場──日本における公設浴場の成立
 第一節 海外の「公衆浴場運動」と公設浴場
 第二節 日本におけるPublic Bathの移植
 第三節 公衆浴場の社会事業的側面──小括
第四章 社会事業行政における公設浴場の位置づけ──大阪市を事例に
 第一節 日本の救貧政策
 第二節 大阪の社会事業進展の背景
 第三節 大阪の公設浴場の設立
 第四節 大阪の民間浴場
 第五節 都市政策としての公設浴場──小括
第五章 京都における公設浴場の設立
 第一節 部落改善運動と共同浴場
 第二節 京都市の市域拡張と水道整備
 第三節 京都における「部落改善事業」
 第四節 京都における公設浴場の設置
 第五節 公設浴場の運営と収益
 第六節 京都における公設浴場設立の意義──小括
第六章 東京における公設浴場の設立
 第一節 公設浴場設立以前の浴場──東京浴場組合と「公益浴場」
 第二節 社会事業の進展と公設浴場設立の背景──入浴料をめぐる争い
 第三節 東京市の公設浴場──関東大震災と仮設浴場
 第四節 東京市の公設浴場における入浴料値下げ問題
 第五節 「東京市設浴場」に対する法規制
 第六節 東京における公設浴場の位置づけ──小括
終 章

  あとがき
  参考文献
  索 引

書評掲載

「山梨日日新聞」「秋田さきがけ」(2016年10月2日付)にて紹介されました。

「日本医史学雑誌」(2017年63巻1号/永島剛氏・評)にて紹介されました。

関連書籍

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