ホッテントット・ヴィーナス
ある物語

四六判 / 494ページ / 上製 / 定価:3,800円 + 税 
ISBN978-4-588-49026-2 C1097 [2012年05月 刊行]

内容紹介

19世紀初頭、南アフリカからロンドン、パリに連れてこられ、「ホッテントット・ヴィーナス」の呼び名で見世物にされたサラ・バールトマン。その死後は、医学のためと称して解剖され、パリの人類博物館に展示・保存された。当時、科学の名のもとに、黒人である彼女に向けられた偏見に満ちたまなざしとは? 本書は、実在したアフリカ女性を主人公にしたポストコロニアル文学の傑作。

著訳者プロフィール

バーバラ・チェイス=リボウ(チェイス=リボウ,B.)

(Barbara Chase-Riboud)
1939年、アメリカ、フィラデルフィア生まれ。イェール大学で学び、1979年、ベストセラーとなった『サリー・ヘミングス』で、アメリカの女流作家の手になる最高の小説に与えられるジャネット・ハイジンガー・カフカ賞を受賞。歴史小説『ヴァリデ―ハレムの物語』(1986年)、『ライオンの咆哮』(1989年)、『大統領の娘』(1994年)は、いずれも絶賛を浴び、広く翻訳されている。これらに次ぐ歴史小説である本書には、2005年、アメリカ図書館協会からブラック・コーカス賞(「ブラック・コーカス」は黒人の権利向上をめざすアメリカの民間団体)が贈られた。1988年には、詩集『クレオパトラのごとき裸婦の肖像』で、優れたアメリカの詩人に贈られるカール・サンドバーグ賞を受賞し、詩人としての評価も高い。数々の受賞作品がロワー・マンハッタンを飾る彫刻家としても知られる。1996年にはフランス文化省から芸術文化勲章を授与された。現在、アメリカのみならず、パリ、ローマでも活躍を続けている。

井野瀬 久美惠(イノセ クミエ)

1958年生まれ。
京都大学大学院文学研究科西洋史学専攻博士課程単位修得退学。博士(文学)。
現在、甲南大学文学部教授。専門はイギリス近代史、帝国史。
主な著書に、『大英帝国はミュージック・ホールから』(朝日新聞社、1990年)、『女たちの大英帝国』(講談社現代新書、1998年)、『黒人王、白人王に謁見す』(山川出版社、2002年)、『植民地経験のゆくえ』(人文書院、2004年)、『大英帝国という経験』(講談社、2007年)、『イギリス文化史』(編著、昭和堂、2010年)、『アフリカと帝国』(共編著、晃洋書房、2011年)ほか。

安保 永子(アンボ エイコ)

1954年生まれ。
1976年、関西学院大学社会学部卒。
2000年より甲南大学文学部の聴講生となり、歴史文化学科、英語英米文学科の授業を中心に、監訳者の講義などを受講し、現在にいたる。

余田 愛子(ヨデン アイコ)

1956年生まれ。
1979年、関西学院大学文学部、教育心理学科卒。
2001年より甲南大学文学部の聴講生となり、歴史文化学科、英語英米文学科の授業を中心に、監訳者の講義などを受講し、現在にいたる。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 主人公覚書

第Ⅰ部 一八〇六年、南アフリカ、ケープタウン

第1章 きょうは、見世物興行(フリークショー)はない……
第2章 この物語を始めるなら……
第3章 翌日、私は村を離れ……
第4章 シーザー農園は谷あいにあった……
第5章 そのホッテントットのことを初めて聞いたのは……
第6章 私はエクセター号のデッキに立っていた……

第Ⅱ部 一八一〇年、イギリス、ロンドン

第7章 私はセンセーションを巻き起こした……
第8章 展示場所を見つけてきたのはヘンドリック様で……
第9章 私は入り口に掲げられた看板を見あげた……
第10章 ウェダバーン牧師は大法官法廷に訴えた……
第11章 私が裁判所に姿を現すと……
第12章 親愛なるカサンドラ……
第13章 裁判は私をいっそう有名にし……
第14章 では、これがいま私の四分の一を所有している男なんだわ……
第15章 夫はアフリカに帰ると約束していたが……

第Ⅲ部 一八一四年、フランス、パリ

第16章 拝啓、ジョルジュ・レオポルド・キュヴィエ男爵……
第17章 目がくらむようなまぶしい日差しは……
第18章 私は、ヴィーナスの視線が私に注がれているのを感じた……
第19章 最初、私は平気だった……
第20章 クール・ド・フォンテーヌに戻ると……
第21章 いつものように白人が勝った……
第22章 私は赤いグローブ皮を選んだ……
第23章 ティーダマン様が植物園を横切って……

第Ⅳ部 二〇〇二年、南アフリカ、ケープタウン

 エピローグ

 謝辞
 解題 サラ・バートルマンは眠れない──ポストコロニアルにおける歴史小説の試み

書評掲載

「女性とジェンダーの歴史」(第3号、2015年11月発行/奥田伸子氏・評)にて紹介されました。