サピエンティア 56
多文化主義のゆくえ
国際化をめぐる苦闘

A5判 / 432ページ / 上製 / 定価:4,800円 + 税 
ISBN978-4-588-60356-3 C3331 [2018年12月 刊行]

内容紹介

リベラル多文化主義の理論家として世界的に著名な政治哲学者が、国際法や国際政治学の知見を活用しつつ、多文化主義の普及をめざす1990年代以降の国際社会の取り組みの軌跡をたどり、さまざまな困難の原因究明に挑む。移民受け入れに対する反発が噴出する今日、多文化主義の未来はいかにあるべきだろうか。少数民族や先住民族の権利保障のあり方にも大きな示唆をもたらす必読の書。

著訳者プロフィール

ウィル・キムリッカ(キムリッカ ウィル)

(Will Kymlicka)
カナダの政治哲学者。クイーンズ大学で哲学と政治学を学び、1987年、G. A. コーエンの指導の下、哲学博士号を取得。1998年からは母校であるクイーンズ大学哲学学部で教鞭をとるとともに、ハンガリーの中央ヨーロッパ大学のナショナリズム研究プログラムの客員教授も務める。英米圏を代表する政治理論家であり、日本でも『多文化時代の市民権――マイノリティの権利と自由主義』(晃洋書房、1998年)、『現代政治理論』(日本経済評論社、2002年)、『新版 現代政治理論』(日本経済評論社、2005年)、『土着語の政治――ナショナリズム・多文化主義、シティズンシップ』(法政大学出版局、2012年)、『人と動物の政治共同体――「動物の権利」の政治理論』(尚学社、2016年)が翻訳されている。

稲田 恭明(イナダ ヤスアキ)

東京大学経済学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。東京大学大学院法学政治学研究科・助手。法学部学習相談員。法哲学専攻。
主な業績:「国連先住民族権利宣言の意義と課題――「先住民族」の定義問題をめぐって」『法哲学年報』2012年、「多文化社会の立法システム」西原博史編『立法学のフロンティア第2巻 立法システムの再構築』ナカニシヤ出版、2014年ほか。

施 光恒(セ テルヒサ)

1971年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。九州大学大学院比較社会文化研究院・准教授(政治理論・政治哲学・人権論)。
主な業績:『リベラリズムの再生――可謬主義による政治理論』慶應義塾大学出版会、2003年、『ナショナリズムの政治学――規範理論への誘い』(共編著)ナカニシヤ出版、2009年、『英語化は愚民化――日本の国力は地に落ちる』集英社新書、2015年、『本当に日本人は流されやすいのか』角川新書、2018年ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

謝辞

第I部 国家・マイノリティ関係の(再)国際化

第1章 序論
第2章 変化する国際的文脈:戦後の普遍的人権から冷戦後のマイノリティの権利へ
戦後の解決策/マイノリティの権利の再生/レトリックから行動へ/変化を説明する

第II部 リベラル多文化主義を理解する

第3章 リベラル多文化主義の諸形態
様々なリベラル多文化主義/リベラル多文化主義の主要な三つの特徴
第4章 リベラル多文化主義の起源:源泉と前提条件
人権革命による鼓舞/制約としての人権革命/多文化主義とリベラル化/政治を取り戻す/人権革命における諸原理と地政学/地政学的安全保障と種族関係の「脱安全保障問題化」/多文化主義からの後退?/社会運動多文化主義から法人多文化主義へ/結論
第5章 リベラル多文化主義の実践を評価する
下位国家民族集団/先住民族/移民/結論

第III部 リベラル多文化主義の国際的普及における逆説

第6章 欧州の実験
「成功事例」戦略/リベラル多文化主義の失われた源泉と前提条件/「成功事例」から「規範」と「基準」へ/マイノリティの権利規範を策定する欧州/「少数民族」の権利を定式化する/「規範」と「基準」から紛争の予防・解決へ/効果的参加の権利/結論
第7章 グローバルな挑戦
成功事例の限界/起源と前提条件を評価する/成功事例から規範と基準へ/規範・基準から事例別紛争解決へ/結論
第8章 結論:不確かな未来

訳者あとがき
参考文献
索引

関連書籍

『土着語の政治』
ウィル・キムリッカ:著
『ヴェール論争』
クリスチャン・ヨプケ:著
『差異』
ミシェル・ヴィヴィオルカ:著
『市民の外交』
上村 英明:編著
『正義のフロンティア』
マーサ・C.ヌスバウム:著