小局からのお知らせ

「第3回 法政大学出版局学術図書刊行助成」
選考結果のお知らせ

法政大学出版局では、2014年より「法政大学出版局学術図書刊行助成制度」を新たに設け、全国の各大学在職の研究者および民間研究者を対象に、優れた学術的価値を有する専門的研究成果の募集を行っております。

2016年も、第3回の募集を行い、去る5月の締め切り後、局内および小局理事会における厳正な審査と、外部の審査員による評価を経て、本年度は下記の2点の論文作品を刊行助成対象とすることに決定いたしました。

(1)
著者:池田有日子(九州大学法学部非常勤講師)
論文:「ユダヤ人問題からパレスチナ問題へ──アメリカ・シオニスト運動にみる暴力連鎖の構造」

《選考理由》
「「ユダヤ人問題」は世界史を貫通する大問題のひとつであり、「パレスチナ問題」は19世紀から今日に至る世界を揺さぶり続けている大問題のひとつである。長らく「ディアスポラ」の状態に置かれたユダヤ教徒・ユダヤ人にとって、近代に成立した「国民国家」システムは何を意味しているのか。20世紀半ばに彼らが独特な「国民国家」を構築するに至った背景はいかなるものだったのか。イスラエル国の領土拡大と暴力の行使はなぜ、いかにして生じたのか。これまで必ずしもふさわしい調査がなされてきたとは言えない「アメリカ・シオニズム」の諸潮流を分析の対象とすることで、上記諸問題のまさに立体的な構造を初めて描き出すことに成功した研究。」

(2)
著者:大坪玲子(東京大学大学院・学術研究員)
論文:「嗜好品カートとイエメン社会」

《選考理由》
「嗜好品である「カート」の消費・生産・流通についての緻密な分析を通して、現代イエメン社会を描いた民族誌。カートは、アラビア半島と東アフリカとの間の海を越えた歴史的交流のなかで利用を広げてきたグローカルな嗜好品であり、本論文は日本語で読める総合的なモノグラフとしては初のもの。イスラーム経済の実態や人間関係を複眼的に理解するための可能性をもたらす研究であり、文化人類学ならびに中東研究、また広く人文社会科学の研究者にとって意義をもつ。」

書籍としての刊行は、2017年春〜夏を予定しております。

このほか、多数の力作論文のご応募をいただきましたが、残念ながら今回はご期待に添うことができませんでした。ご応募いただきましたすべての皆さまに、心より感謝を申し上げます。

なお、次年度以降も引きつづき、本「刊行助成制度」を実施してまいります。2017年3月下旬以降に、当ウェブサイト上にて詳細を告知する予定ですので(締め切りは5月末)、積極的なご応募をお待ちしております。

2016年11月7日 一般財団法人 法政大学出版局