小局からのお知らせ

「第6回 法政大学出版局学術図書刊行助成」
選考結果のお知らせ

法政大学出版局では、2014年より「法政大学出版局学術図書刊行助成制度」を設け、全国の各大学在職の研究者および民間研究者を対象に、優れた学術的価値を有する専門的研究成果の募集を行っております。

2019年も、春に第6回目の募集を行い、局内および小局理事会における厳正な審査と、外部の審査員による評価を経て、本年度は下記の2点の論文作品を刊行助成対象とすることに決定いたしました。

(1)
著者:金志成 氏
論文:『対話性のグレンツェ──ヴーヴェ・ヨーンゾンの詩学』

《選考理由》
「第二次大戦後のドイツ文学を代表する作家の一人、ウーヴェ・ヨーンゾンの全体像を論じた本邦初の論文。ポスト構造主義や脱構築主義の文脈においてヨーンゾンの詩学テキストや小説テキストを新しく捉え直そうとする著者の戦略は新鮮である。ヨーンゾンの小説は残念ながらいまだ邦訳がきわめて少ないが、ヨーンゾンの文学をよく知るドイツ語圏の人々よりも、まったく知らない日本語の人々に届けたいという著者の試みを通じて、今後の現代文学研究が活性化することが期待される。」

(2)
著者:守博紀 氏
論文:『その場に居合わせる思考──言語と道徳をめぐるアドルノ』

《選考理由》
「〈概念によって概念を批判する〉というモティーフに象徴されるアドルノの哲学的思考の核心を、緻密な議論を積み重ねることで説得力あるかたちで構造的に剔抉することに成功している。これまでの研究であまり焦点が当てられてこなかった言語と道徳という二つの観点を議論の基軸にしていること、およびアドルノの音楽論と哲学的思考との内在的な関係に論及していることで、狭義の哲学研究の枠に収まらない複合的な視野と広い射程を獲得している。これまでの研究を刷新する画期的な著作となることは間違いない。」

書籍としての刊行は、2020年春〜夏を予定しております。
このほか、多数の力作論文のご応募をいただきましたが、残念ながら今回はご期待に添うことができませんでした。ご応募いただきましたすべての皆さまに、心より感謝を申し上げます。

なお、次年度以降も引きつづき、本「刊行助成制度」を実施してまいります。2020年3月下旬以降に、当ウェブサイト上にて詳細を告知する予定ですので(締め切りは5月末)、積極的なご応募をお待ちしております。

2019年10月16日 一般財団法人 法政大学出版局