パスカル読本

A5判 / 532ページ / 並製 / 価格 3,850円 (消費税 350円) 
ISBN978-4-588-15148-4 C1010 [2026年02月 刊行]

内容紹介

近代科学の黎明期、天才科学者として出発したパスカルはイエスとの歓喜の交わりを経たのち、人々を「無限の空間の永遠の沈黙」から真なる神との出会いへと導くべく断章(『パンセ』)を書き続けた。生誕400年を迎えてなお読者を魅了してやまない不世出の思索者の全貌を、科学史、文学、霊性、宗教史、哲学分野の研究者29名が総力をあげて読解する。パスカル理解が本格的に深まる決定版の一冊。

著訳者プロフィール

山上 浩嗣(ヤマジョウ ヒロツグ)

山上 浩嗣(ヤマジョウ ヒロツグ) 
1966 年生。大阪大学教授。仏文学。著書:『パスカルと身体の生』(大阪大学出版会)、『パスカル『パンセ』を楽しむ』(講談社)、『モンテーニュ入門講義』(筑摩書房)。

望月 ゆか(モチヅキ ユカ)

望月 ゆか(モチヅキ ユカ)
1964年生。武蔵大学教授。仏文学。訳書:パスカル『恩寵文書』(白水社版メナール全集第二巻)、『小品と手紙』(共訳、岩波文庫)、共著:Pascal, auteur spirituel (H. Champion)。

武田 裕紀(タケダ ヒロキ)

武田 裕紀(タケダ ヒロキ)
1968年生。追手門学院大学教授。仏文学。著書:『デカルトの運動論──数学・自然学・形而上学』(昭和堂)、共著:『合理性の考古学』(東京大学出版会)。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 【山上浩嗣】

凡 例

はじめに ヨーロッパ近世とパスカル 反時代的思想の現代性 【塩川徹也】

第Ⅰ部 パスカルの軌跡──生涯、実践、思想

1 パスカルの生涯 【山上浩嗣】

2 計算機の発明 思想的意味の解明 【永瀬春男】

3 流体の平衡 遺作論文における論証と説得 【永瀬春男】

4 「トリチェッリの実験」とパスカル 【小柳公代】

5 数三角形と図形数 【三浦伸夫】

6 第一の回心期の格率 信仰と科学 【望月ゆか】

7 科学的認識と論証 『幾何学的精神について』を中心に 【武田裕紀】

8 『プロヴァンシアル』 論争とその背景 【野呂 康】

9 前半『プロヴァンシアル』の著者性 署名と構想 【望月ゆか】

10 信仰宣誓書 十七世紀フランスの踏み絵 【御園敬介】

11 無限小幾何学の方法 蹄状体の解法を通して 【武田裕紀】

コラム❶ 「真空中の真空実験」復元記 【小柳公代】

コラム❷ 確率論と蓋然性 【沖本龍哉】

第Ⅱ部 『パンセ』の世界

1 『パンセ』の成り立ちと編集の問題 【山上浩嗣】

コラム❸ 『パンセ』邦訳書リスト 【望月ゆか】

2 『パンセ』とメメント・モリ 「考える葦」から「賭け」へ 【山上浩嗣】

3 パスカルのキリスト教的人間観 「考える葦」再考 【望月ゆか】

4 幾何学から『パンセ』に向かって 数学的思考とパスカルの人間学との関係 【ジョアン・コルテーゼ】

5 不完全な共同体としての地上の国家 正義の相対性と邪欲の秩序 【山上浩嗣】

6 『パンセ』における「見ること」 【川上紘史】

7 慈愛、あるいは脱線の秩序 〈護教〉のための文体を求めて 【鈴木真太朗】

8 草稿研究の事例 断章「懐疑論者たちの議論の威力」の草稿から発掘できる二つの文書 【湟野正満】

第Ⅲ部 パスカルと先人・同時代人との対話と対決

1 パスカルとモンテーニュ 【山上浩嗣】

2 パスカルとデカルト 誇りをめぐって 【津崎良典】

3 パスカルと自然学の論敵たち サイフォンの原理を通して 【武田裕紀】

4 パスカルとアウグスティヌス ① 救霊と恩寵 【道躰滋穂子】

5 パスカルとアウグスティヌス ② 原罪と近世 【大西克智】

6 パスカルとジャンセニウス 【林伸一郎】

7 『頻繁な聖体拝領』──パスカル思想の遠景として 慈愛と悔悛をめぐるポール・ロワイヤル黎明期の神学論争 【望月ゆか】

8 パスカルと決疑論 【森元庸介】

9 パスカルと聖体の問題 【石川知広】

10 パスカルとポール・ロワイヤルの教育書 『文法』からみる『論理学』とパスカル 【久保田静香】

コラム❹ パスカルとヴァレリー 「理解の限界」と「理想の敵」 【井上直子】

コラム❺ 無限の情報空間の永遠の沈黙 【大野博人】

第Ⅳ部 パスカルと後世

1 ライプニッツとパスカル パスカルによってパスカルを超える 【稲岡大志】

2 ベールとパスカル 【谷川雅子】

3 ヴォルテールとパスカル 【山上浩嗣】

4 十九世紀のパスカル研究 【塩川徹也】

5 十九世紀科学哲学とパスカル オーギュスト・コントとパスカル 【安孫子信】

6 パスカル──モダン、アンチモダン、オルターモダン? 【トニー・ゲラルト】

コラム❻ パスカルを読むペギー 【檜垣樹理】

コラム❼ パスカル研究会 歴史、国際シンポジウム、フランスの姉妹団体 【支倉崇晴】

第Ⅴ部 著作解題

数学
1 『円錐曲線試論』 【武田裕紀】
2 『円錐曲線の生成』 【同】
3 『いとも高名なパリ数学アカデミーに』 【同】
4 『数三角形論ならびに同じ主題に関する若干の小論文』 【三浦伸夫】
5 「幾何学序論」 【武田裕紀】
6 『幾何学上の発見若干を含むA・デトンヴィルの手紙』 【同】
7 「続ルーレットの歴史」 【同】
8 パスカルとスリューズの往復書簡 【三浦伸夫】

自然学
9 『真空に関する新実験』 【武田裕紀】
10 ノエル神父との往復書簡 【同】
11 『流体の平衡についての大実験の話』 【同】
12 「『真空論』の断片」 【同】
13 パスカルとリベイルとの往復書簡 【同】
14 『流体の平衡と大気の重さについての論文』 【同】

計算機関連
15 『大法官閣下への献呈の手紙と手引』 【永瀬春男】
16 『スウェーデンのクリスティーナ女王への手紙』 【同】

霊性・人間論
17 第一の回心期 姉ジルベルト宛の手紙 【望月ゆか】
18 『真空論序言』 【川上紘史】
19 『父の死についての手紙』 【以下、望月ゆか】
20 『メモリアル』
21 『サシ氏との対話』
22 『要約イエス・キリスト伝』
23 『幾何学的精神について』
24 『罪人の回心について』
25 『恩寵文書』
26 『プロヴァンシアル』
27 『ロアネーズ嬢宛の手紙』
28 『プロヴァンシアル』関連文書
29 『ペリエ夫妻宛の手紙の断片』
30 『初期のキリスト教徒と今日のキリスト教徒との比較』
31 『フェルマ宛の手紙』
32 『病の善用を神に求める祈り』
33 『大貴族の身分に関する講話』
34 信仰宣誓書関連文書
35 『愛の情念について』(偽)

略年譜 【鈴木真太朗】

人名索引・作品名索引

執筆者(掲載順)

塩川 徹也(シオカワ テツヤ)
1945年生。東京大学名誉教授、日本学士院会員。フランス文学・思想。著書:『パスカル考』(岩波書店)、訳書:パスカル『パンセ』(岩波文庫)、『小品と手紙』(共訳、同)。

永瀬 春男(ナガセ ハルオ)
1948年生。岡山大学名誉教授。フランス文学。著書:『秩序と侵犯』(岡山大学文学部研究叢書)、共編訳書:『パスカル科学論集──計算機と物理学』(白水社)。

小柳 公代(コヤナギ キミヨ)
1943年生。愛知県立大学名誉教授。仏文学。著書:『パスカル 直観から断定まで』(名古屋大学出版会)、共著:«L'Affair Arnauld» in Dictionnaire de Port-Royal(H. Champion)。

三浦 伸夫(ミウラ ノブオ)
1950年生。神戸大学名誉教授。著書:『フィボナッチ』(現代数学社)、『古代エジプトの数学問題集を解いてみる』(NHK出版)、『文明の中の数学』(現代数学社)。

野呂 康(ノロ ヤスシ)
1970年生。岡山大学准教授。著書:Une Vie à la trace : Amable Bourzeis、écrivain (1606–1672)(Classique Garnier)、共編著:『GRIHL I、II』(吉田書店)。

御園 敬介(ミソノ ケイスケ)
1975年生。慶應義塾大学教授。フランス思想史。著書:『ジャンセニスム 生成する異端』(慶應義塾大学出版会)、Écrire contre le jansénisme(H. Champion).

沖本 龍哉(オキモト タツヤ)
1982年生。法政大学非常勤講師。論文:「アルノーとパスカルにおける道徳の問題──「蓋然性」から「確率」へ」(『フランス哲学・思想研究』第25号)。

ジョアン・コルテーゼ(João Corteze)
1988年生。サンパウロ大学教授。科学哲学。著書:Infini et Disproportion chez Pascal(Honoré Champion)。

川上 紘史(カワカミ ヒロフミ)
1989年生。奈良女子大学非常勤講師。フランス文学。博士論文:Voir autre chose que ce que je vois. La vision chez Pascal(リヨン第二大学)。

鈴木 真太朗(スズキ シンタロウ)
盛岡大学准教授。17世紀フランス文学・思想。共著:L'Inscription du fait religieux dans les écrits personnels en France au XVIIe siècle(Classiques Garnier)。

湟野 正満(ホリノ マサミツ)
1949年生。京都産業大学名誉教授。論文:«Les trois écrits que la «pluri-lecture» a permis de reconstituer à partir du manuscrit de Divertissement»(Le Courrier du CIBP, 36).

津崎 良典(ツザキ ヨシノリ)
1977年生。筑波大学教授。西洋近世哲学。著書:『デカルトの憂鬱』(扶桑社)、共著:『世界哲学史』別巻(筑摩書房)、共訳書:『デカルト全書簡集』第四巻(知泉書館)。

道躰 滋穂子(ドウタイ シホコ)
1945年生。桜美林大学名誉教授。哲学。著書:『パスカルの宗教哲学』(知泉書館)、訳書:フィリップ・セリエ『パスカルと聖アウグスティヌス』(法政大学出版局)。

大西 克智(オオニシ ヨシトモ)
1970年生。九州大学教授。著者:『意志と自由── 一つの系譜学』(知泉書館)、『『エセー』読解入門──モンテーニュと西洋の精神史』(講談社学術文庫)。

林 伸一郎(ハヤシ シンイチロウ)
1961年生。明星大学教授。宗教学。共著:『西洋哲学史[近代編]』(ミネルヴァ書房)、『宗教学文献事典』(弘文堂)。

森元 庸介(モリモト ヨウスケ)
1976年生。東京大学教授。思想史。著書:La Légalité de l'art(Cerf)、共著:『シャルル・フーリエの新世界』(水声社)。共訳書:『黒人法典』(明石書店)。

石川 知広(イシカワ トモヒロ)
1950年生。東京都立大学名誉教授。フランス文学・思想。論文:「『ポール=ロワイヤル論理学』第五版増補とフランス聖体論争」(東京都立大学『人文学報』165・182号)。

井上 直子(イノウエ ナオコ)
1969年生。大阪教育大学教授。20世紀フランス文学。著書:Paul Valéry : l'apparaître des choses(ANRT)、共著:『エクリチュールの冒険』(大阪大学出版会)。

大野 博人(オオノ ヒロヒト)
1955年生。元・朝日新聞論説主幹。大学院でパスカルを研究。共著:『民主主義って本当に最良のルールなのか、世界をまわって考えた』(東洋経済新報社)。

久保田 静香(クボタ シズカ)
日本女子大学准教授。フランス文学・思想。論文:「ペトルス・ラムスの「方法」と文法改革」(『京都ユダヤ思想』第14号)、共訳書:『懐疑主義と信仰』(知泉書館)。

稲岡 大志(イナオカ ヒロユキ)
1977年生。大阪経済大学准教授。哲学。著書:『ライプニッツの数理哲学』(昭和堂)、訳書:マシュー・スチュワート『マネジメント神話』(明石書店)。

谷川 雅子(タニガワ マサコ)
1985年生。大阪大学招へい研究員。仏文学。著書:Pierre Bayle en contexte(H. Champion)。

安孫子 信(アビコ シン)
1951年生。法政大学名誉教授。哲学。共編著:『デカルトをめぐる論戦』(京都大学学術出版会)、『ベルクソン読本』(法政大学出版局)。

トニー・ゲラルト(Tony Gheeraert)
1971年生。ルアン・ノルマンディー大学教授。仏文学。著書:Le Chant de la grâce. Port-Royal et la poésie(H. Champion)、Saturne aux deux visages(P. U. de Rouen et du Havre)。

檜垣 樹理(ヒガキ ジュリ)
早稲田大学国際教養学部准教授。フランス宗教思想・文学、宗教哲学。著書:Péguy et Pascal : les trois ordres et l'ordre du cœur(Centre International Blaise Pascal)。

支倉 崇晴(ハセクラ タカハル)
1937年生。東京大学名誉教授。フランス文学。共編訳書:『メナール版パスカル全集』(白水社)、共訳書:フィリップ・セリエ『聖書入門』(講談社)。



『パスカル読本』(第1刷)訂正のお知らせ

本書の印刷後、組版上のミスが生じていたことがわかりました。
以下に修正点をお知らせするとともに、正誤情報を記します。
ミスの責任はすべて編集部にございます。執筆者のみなさま、読者のみなさまにはご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません。謹んでおわびを申し上げます。

■117頁 下段 7行目
elocutio の末尾「tio」の部分のみが立体になっていますが、正しくは斜体にすべきでした。

■300頁 上段 21行目
evidentia の末尾「ia」部分のみが立体になっていますが、正しくは斜体にすべきでした。

■300頁 下段 8行目
peccato の末尾「to」部分のみが立体になっていますが、正しくは斜体にすべきでした。

■302頁 上段 13行目
damnationis の末尾「nis」部分のみが立体になっていますが、正しくは斜体にすべきでした。

■303頁 上段 14行目
fit の語のみが立体になっていますが、正しくは斜体にすべきでした。

以上

2026年2月 編集部