叢書・ウニベルシタス 422
祖国地球〈新装版〉
人類はどこへ向かうのか

四六判 / 234ページ / 上製 / 価格 2,970円 (消費税 270円) 
ISBN978-4-588-14072-3 C1310 [2022年12月 刊行]

内容紹介

生態環境の破壊、人口増大と民族対立、政治の停滞と宗教の無力、科学技術の歯止めなき発展……。いよいよ鮮明になる地球の危機と人類滅びの構図。私たちは真に《地球運命共同体》の意識を共有し、人間性の証しを見出すことができるのか? ──いまから29年前に刊行された本書は、現在の《祖国地球》の危機のなかでこそ再読に値する、究極の問いかけを読者に届けてくれる。

著訳者プロフィール

E.モラン(モラン エドガール)

E.モラン(Edgar Morin)
1921年パリ生まれの社会学者・思想家。パリ大学に学ぶ。大戦中は対独レジスタンス活動に参加。戦後は雑誌編集者、映画評論家として活躍。パリの国立科学研究所(CNRS)の主任研究員として、現代の多元的・総合的な人間・社会・文化の調査研究に成果を上げる。主な著書に、1946年の『ドイツ零年』以降、『人間と死』『映画』『自己批評』『プロデメの変貌』『失われた範列』『オルレアンのうわさ』『時代精神 1・2』『20世紀からの脱出』『意識ある科学』『ソ連の本質』『ヨーロッパを考える』『方法 1〜5』『E.モラン自伝』『百歳の哲学者が語る人生のこと』などがあり、多くが邦訳されている。協力者のアンヌ・ブリジット・ケルンは文芸・科学評論家、ラジオ局フランス・キュルチュールのプロデューサーで科学・文化番組を担当した。

菊地 昌実(キクチ マサミ)

菊地 昌実 1938–2020年。東京大学大学院(比較文学)修士課程修了。北海道大学名誉教授。著訳書『アルベール・カミュ』(白馬書房)、『漱石の孤独』(行人社)、メンミ『あるユダヤ人の肖像』『人種差別』『脱植民地国家の現在』(共訳)、サルナーヴ『死者の贈り物』(共訳)、グロ『フーコーと狂気』(以上、法政大学出版局)、メンミ『イスラエルの神話』(共訳)、ルヴェル/リカール『僧侶と哲学者』(共訳)、ブリクモン『人道的帝国主義』、ラヴァル『経済人間』、『絶対平和論──日本は戦ってはならない』(以上、新評論)ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

プロローグ──
歴史というものの歴史
 先史時代歴史
 偉大な歴史の数々

1 地球時代

 地球革命
 地球時代の始まり
 世界の西洋化
 思想の世界化
 戦争による世界化
 希望からダモクレスの剣の脅威へ
 経済の世界化
 ホログラム
 地球意識の形成
 人類の出現

2 地球籍身分証明書

 一つのコスモスからもう一つのコスモスへ
 ただ一つしかない惑星
 生命の地球 
 人間のアイデンティティ
 人類学的単一性
 地球意識

3 地球の最期の苦しみ

第一の明証証に属する問題
 世界経済の乱調
 世界人口の乱調
 生態学的危機
 発展〔開発〕の危機

第二の明証性に属する問題
 地球の連帯化と分裂の、対立し、かつ関連する二重の過程
 未来をあまねくおおう危機
 「発展〔開発〕」の悲劇
 文明がもたらす不調あるいは病
 科学技術の闇雲で、歯止めのない発展

最期の苦しみ
 危機か?
 複合危機
 加速
 ダモクレス的局面
 野蛮同盟
 最期の苦しみか?

4 地球上の私たちの目的

 保存すること・変革すること
 抵抗すること
 ヒト化の自覚的遂行
 問題としての発展〔開発〕から人間的発展〔開発〕へ
 発展〔開発〕、資本主義、社会主義
 発展〔開発〕世界と低発展〔開発〕世界の低発展〔開発〕の発展
 超‐発展
 過去・現在・未来の関係を再発見すること
 内的・外的関係
 文明を文明化すること
 文明化をめざす民主化
 地球を連邦化すること
 その通り、しかし……

5 不可能な現実主義

 不確実な現実
 理念と現実の間の耳の聞こえない対話
 賭
 可能事・不可能事
 逆向きの力の巨大さ
 可能な不可能事?

6 人類政治

 政治から人類政治へ
 全体化政治と全体主義的政治
 中身を失い、分割された政治
 人類学的基盤をもった複雑性
 指揮を取る複雑性──政治の生態学と戦略
 三つの時間
 三つの空間
 減速を準備すること
 超‐技術時代を準備すること

7 思考の変革

 ばらばらの部品からなる思考
 偽りの合理性
 合理化に抗して合理性を復興させること
 文脈と複合体を考えること
 思考の復興

8 滅びの福音書

 救済の喪失、未知の冒険
 良き・悪き知らせ
 友愛への呼びかけ
 地球に住むこと、生きるために生きること
 滅びの福音書

結論──
祖国地球

 大合流
 陸だ〔地球だ〕!
 地球運命共同体
 地球を共同操縦すること
 緒戦

原注
訳者あとがき

書評掲載

「Eテレ「趣味どきっ! 読書の森へ 本の道しるべ」(2022年12月20日/ヤマザキマリ氏)に紹介されました。