19世紀ドイツで近代教育学の出発点を築き、明治期以来日本の教育現場にも大きな影響を及ぼした哲学者J. F.ヘルバルト(1776–1841)。人格の陶冶を通じて人間の「完全性」を追求するその理念は近代国家の教育システム形成に寄与したが、そこには目的合理性の追求にとどまらない、「無限」や「崇高」を希求するダイナミックな思想があった。完全性概念のもつ歴史的意義を再提示する教育思想史研究の成果。
小山 裕樹(オヤマ ユウキ)
小山 裕樹(オヤマ ユウキ)
1980年生まれ。聖心女子大学准教授。教育哲学・教育思想史。博士(教育学)。主要業績として、『教育と出会いなおすための教育思想』(共著、教育開発研究所、2025年)、『ポップカルチャーの教育思想』(共著、晃洋書房、2023年)、『道徳教育』(共著、学文社、2023年)、『西洋教育思想史【第2版】』(共著、慶應義塾大学出版会、2020年)、『哲学の変換と知の越境』(共著、法政大学出版局、2019年)、『教員養成を問いなおす』(共著、東洋館出版社、2016年)、『「甘え」と「自律」の教育学』(共著、世織書房、2015年)など。
凡例
序 論
第一節 本書の目的
第二節 先行研究の現状と課題
第三節 本書の考察方法
第四節 本書の構成
第一章 若きヘルバルトと「完全性」との出会い
第一節 「自由」と「完全性」
第二節 ヘルバルトの「超越論的自由論」批判
第三節 初期ヘルバルトの思想形成におけるドイツ講壇哲学の隠れた影響──「自由」への「完全性」
1.「超越論的自由論」批判とドイツ講壇哲学への批判的接近
2.家庭教師ユルツェンからの影響(一七八三年頃~一七八八年頃)
3.「永遠なる神の存在証明について」(一七八九年)
4.「人間の自由の理論に関するいくつかの事柄」(一七九〇年)とこれへの自己批判(一八〇〇年)
5.「国家において道徳性の成長と衰退をもたらす最も一般的な原因について」(一七九三年)
第二章 「完全性」と実践哲学
第一節 「道徳性」概念の「拡大」
第二節 ドイツ講壇哲学における「完全性」に基づく認識の階梯論
1.ライプニッツにおける認識の階梯論
2.ヴォルフにおける認識の階梯論
3.バウムガルテンにおける認識の階梯論
第三節 「道徳性」と「内的自由の理念」
第四節 「内的自由の理念」と「完全性の理念」
1.「完全性の理念」とは何か──「内的自由」に向かう「量」の「見積もり」
2.「完全性の理念」を構成する三つの指標──「内包性」・「外延性」・「統合」
3.「論理」と「美」の「分離」および「結合」
4.「完全性」と「無限」および「崇高」──「量」を超えて
第三章 「完全性」と教育学
第一節 ヘルバルト教育学における「完全性」
第二節 教育目的と「完全性」
1.教育の必然的な目的としての「道徳性」
2.教育の可能的な目的としての「多面的興味」
3.「道徳性」と「多面的興味」の「統一」──人間像としての「球体」と「完全性」
第三節 教育における「教授」と「完全性」
1.「教授」の論理学的諸相としての「分析的教授」と「総合的教授」
2.「教授」の心理学的諸相としての「明晰」・「連合」・「系統」・「方法」
3.「教授」と「無限」および「崇高」
第四節 「完全性」の「制限」と「修正」
1.「完全性」のみを追求することの危険性
2.「完全性」の「制限」と「修正」
第四章 「完全性」と心理学
第一節 「完全性」の心理学的射程
第二節 ヘルバルト心理学の学説史上の位置づけと一般的評価
1.ヘルバルト心理学の源泉(1)──フィヒテの「絶対的自我」論の継承と批判
2.ヘルバルト心理学の源泉(2)──「微分積分学」の研究
3.ヘルバルト心理学の源泉(3)──ドイツ講壇哲学の「完全性」論への批判的接近
4.ヘルバルト心理学は機械論的心理学か
第三節 ヘルバルト心理学に見られる「完全性」のシンボルとしての「球体」
第四節 「球体」のシンボル論的意義──心理学における「無限」と「崇高」
1.フィヒテにおける「球体」と「自由」
2.背景としての西欧における「球体」の文化論
3.ヘルバルトにおける「球体」のシンボル──「無限」と「崇高」をシンボルで描出可能か
第五章 「完全性」と国家学
第一節 「完全性」の国家学的射程
第二節 「完全性の理念」の応用としての「文化体系の理念」
1.ヘルバルトにおける「文化体系の理念」
2.「文化体系の理念」の統一性
3.「文化体系の理念」の開放性
第三節 心理学の応用としての「国家学」
1.「国家学」とは何か
2.国家内の「平静」と「動乱」
3.「不断に有機体化し続ける国家」
第四節 国家の「修繕」・「保全」・「改善」──国家における「無限」と「崇高」
第五節 ヘルバルトにおける国家と学問の関係
1.ヘルバルトの国家に対する態度をめぐる一般的評価
1─1.ゲッティンゲン七教授事件の概要とヘルバルトの対応
1─2.ヘルバルトに対する否定的評価
1─3.ヘルバルトに対する肯定的評価
2.ヘルバルトにおける国家と学問の関係
2─1.反面教師としてのフィヒテ
2─2.均衡=平静としての憲法
2─3.均衡=平静としての大学と学問
第六章 「完全性」と歴史学
第一節 「完全性」の歴史学的射程
第二節 フィヒテにおける「完全性」と歴史哲学
1.ドイツ観念論における歴史哲学
2.フィヒテにおける「完全性」と歴史哲学
第三節 若きヘルバルトの歴史学──フィヒテ著『現代の根本特徴』に対する書評(一八〇七年)
1.時代背景
2.「完全なる罪深さの時代」という時代診断に抗して
3.「存在」と「当為」の混同──「とんでもない逆説」の政治的意味
4.単一性から多数性へ──「個人」を犠牲にする「歴史」観に対する批判
第四節 解放戦争後のヘルバルトの歴史学──「世界史についてのフィヒテの見解について」(一八一四年)
1.時代背景
2.「完全なる罪深さの時代」という時代診断に抗して
3.「知識」と「意見」の混同──「観念論」が抱える理論的問題
4.「歴史」を描写する学問としての「心理学」──「法則性」と「神」
5.「個人」を犠牲にする「歴史」観に対する批判
第五節 晩年のヘルバルトの歴史学──『自然権と道徳の分析的解明』(一八三六年)
1.時代背景
2.「完全なる罪深さの時代」から「蓋然性」のある「未来」へ
3.「真実の歴史」と「神話」の混同──不遜な歴史家にならないために
4.「歴史」を描写する学問としての「心理学」──「蓋然性」のある「歴史」へ
5.「世界計画」という「近視眼」を超えて
第六節 歴史における「無限」と「崇高」
結 論 本書のまとめと残された課題および展望
第一節 各章のまとめと得られた成果
第二節 残された課題および展望
あとがき
初出一覧
引用文献一覧
事項索引
人名索引
序 論
第一節 本書の目的
第二節 先行研究の現状と課題
第三節 本書の考察方法
第四節 本書の構成
第一章 若きヘルバルトと「完全性」との出会い
第一節 「自由」と「完全性」
第二節 ヘルバルトの「超越論的自由論」批判
第三節 初期ヘルバルトの思想形成におけるドイツ講壇哲学の隠れた影響──「自由」への「完全性」
1.「超越論的自由論」批判とドイツ講壇哲学への批判的接近
2.家庭教師ユルツェンからの影響(一七八三年頃~一七八八年頃)
3.「永遠なる神の存在証明について」(一七八九年)
4.「人間の自由の理論に関するいくつかの事柄」(一七九〇年)とこれへの自己批判(一八〇〇年)
5.「国家において道徳性の成長と衰退をもたらす最も一般的な原因について」(一七九三年)
第二章 「完全性」と実践哲学
第一節 「道徳性」概念の「拡大」
第二節 ドイツ講壇哲学における「完全性」に基づく認識の階梯論
1.ライプニッツにおける認識の階梯論
2.ヴォルフにおける認識の階梯論
3.バウムガルテンにおける認識の階梯論
第三節 「道徳性」と「内的自由の理念」
第四節 「内的自由の理念」と「完全性の理念」
1.「完全性の理念」とは何か──「内的自由」に向かう「量」の「見積もり」
2.「完全性の理念」を構成する三つの指標──「内包性」・「外延性」・「統合」
3.「論理」と「美」の「分離」および「結合」
4.「完全性」と「無限」および「崇高」──「量」を超えて
第三章 「完全性」と教育学
第一節 ヘルバルト教育学における「完全性」
第二節 教育目的と「完全性」
1.教育の必然的な目的としての「道徳性」
2.教育の可能的な目的としての「多面的興味」
3.「道徳性」と「多面的興味」の「統一」──人間像としての「球体」と「完全性」
第三節 教育における「教授」と「完全性」
1.「教授」の論理学的諸相としての「分析的教授」と「総合的教授」
2.「教授」の心理学的諸相としての「明晰」・「連合」・「系統」・「方法」
3.「教授」と「無限」および「崇高」
第四節 「完全性」の「制限」と「修正」
1.「完全性」のみを追求することの危険性
2.「完全性」の「制限」と「修正」
第四章 「完全性」と心理学
第一節 「完全性」の心理学的射程
第二節 ヘルバルト心理学の学説史上の位置づけと一般的評価
1.ヘルバルト心理学の源泉(1)──フィヒテの「絶対的自我」論の継承と批判
2.ヘルバルト心理学の源泉(2)──「微分積分学」の研究
3.ヘルバルト心理学の源泉(3)──ドイツ講壇哲学の「完全性」論への批判的接近
4.ヘルバルト心理学は機械論的心理学か
第三節 ヘルバルト心理学に見られる「完全性」のシンボルとしての「球体」
第四節 「球体」のシンボル論的意義──心理学における「無限」と「崇高」
1.フィヒテにおける「球体」と「自由」
2.背景としての西欧における「球体」の文化論
3.ヘルバルトにおける「球体」のシンボル──「無限」と「崇高」をシンボルで描出可能か
第五章 「完全性」と国家学
第一節 「完全性」の国家学的射程
第二節 「完全性の理念」の応用としての「文化体系の理念」
1.ヘルバルトにおける「文化体系の理念」
2.「文化体系の理念」の統一性
3.「文化体系の理念」の開放性
第三節 心理学の応用としての「国家学」
1.「国家学」とは何か
2.国家内の「平静」と「動乱」
3.「不断に有機体化し続ける国家」
第四節 国家の「修繕」・「保全」・「改善」──国家における「無限」と「崇高」
第五節 ヘルバルトにおける国家と学問の関係
1.ヘルバルトの国家に対する態度をめぐる一般的評価
1─1.ゲッティンゲン七教授事件の概要とヘルバルトの対応
1─2.ヘルバルトに対する否定的評価
1─3.ヘルバルトに対する肯定的評価
2.ヘルバルトにおける国家と学問の関係
2─1.反面教師としてのフィヒテ
2─2.均衡=平静としての憲法
2─3.均衡=平静としての大学と学問
第六章 「完全性」と歴史学
第一節 「完全性」の歴史学的射程
第二節 フィヒテにおける「完全性」と歴史哲学
1.ドイツ観念論における歴史哲学
2.フィヒテにおける「完全性」と歴史哲学
第三節 若きヘルバルトの歴史学──フィヒテ著『現代の根本特徴』に対する書評(一八〇七年)
1.時代背景
2.「完全なる罪深さの時代」という時代診断に抗して
3.「存在」と「当為」の混同──「とんでもない逆説」の政治的意味
4.単一性から多数性へ──「個人」を犠牲にする「歴史」観に対する批判
第四節 解放戦争後のヘルバルトの歴史学──「世界史についてのフィヒテの見解について」(一八一四年)
1.時代背景
2.「完全なる罪深さの時代」という時代診断に抗して
3.「知識」と「意見」の混同──「観念論」が抱える理論的問題
4.「歴史」を描写する学問としての「心理学」──「法則性」と「神」
5.「個人」を犠牲にする「歴史」観に対する批判
第五節 晩年のヘルバルトの歴史学──『自然権と道徳の分析的解明』(一八三六年)
1.時代背景
2.「完全なる罪深さの時代」から「蓋然性」のある「未来」へ
3.「真実の歴史」と「神話」の混同──不遜な歴史家にならないために
4.「歴史」を描写する学問としての「心理学」──「蓋然性」のある「歴史」へ
5.「世界計画」という「近視眼」を超えて
第六節 歴史における「無限」と「崇高」
結 論 本書のまとめと残された課題および展望
第一節 各章のまとめと得られた成果
第二節 残された課題および展望
あとがき
初出一覧
引用文献一覧
事項索引
人名索引






