通俗小説からみる文学史
1950年代台湾の反共と恋愛

張文菁:著
A5判 / 292ページ / 上製 / 価格 5,390円 (消費税 490円) 
ISBN978-4-588-49520-5 C1090 [2022年02月 刊行]

内容紹介

日本の植民地統治が終わると、台湾はそれまでの「国語」を失い、図書市場を新たに構築せざるを得なくなった。国民党政権から反共文芸を推奨されるなか、巷の貸本屋で読まれたものは何であったか。作家や作品に加え、政策、市場、メディア、読者の多角的な視点を加えた全7章。文壇から追放された商業出版のしたたかな戦略と共に、恋愛小説がジャンルとして認知される過程を描き出す。

著訳者プロフィール

張文菁(チョウ ブンセイ)

1970年台湾台南市生まれ。慶應義塾大学哲学系卒業,慶應義塾大学大学院文学研究科中国文学専攻修士課程,早稲田大学大学院文学研究科中国語・中国文学専攻課程修了。博士(文学・論文)。現在,愛知県立大学外国語学部准教授。専門は中国語圏通俗小説,台湾文学,中国近代文学。主な論文に「1950年代の台湾における読者とその文学受容――言語および文化の分断からみる通俗小説の流行(『野草』第92号,2013年),「1950年代台湾の通俗出版をめぐる文芸政策と専業化」(日本台湾学会報』第18号,2016年),「1950年代台湾の通俗小説研究――『聯合報』副刊の連載小説を中心として」(『野草』第100号,2018年)などがある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 台湾文学史における一九五〇年代
 1 本書の問題意識
 2 研究の目的と先行研究の問題点
 3 本書の課題と各章の構成
第1章 戦後初期の文化状況
 1 台湾人による戦後初の総合誌『新新』
 2 戦後初期の雑誌出版
 3 台湾社会の世論を反映した誌面作り
 4 台湾人意識と読者の活字離れ
第2章 禁書政策と中国語図書市場の形成
 1 文化政策の転換:「脱日本化」から「反共」へ
 2 一九四〇年代末から五〇年代初頭の台湾図書市場
 3 禁書の諸相
 4 禁書政策の影響
 5 台湾通俗小説の出現へ
第3章 戦後初期の言語転換と台湾人読者
 1 中国語リテラシーと読者
 2 一九五〇年代の中国語識字者
 3 台湾人読者の実相
第4章 新聞「副刊」と通俗小説の勃興
 1 台湾における「副刊」の存在
 2 「報禁」と民間紙
 3 初期『聯合報』副刊連載小説の傾向と変化
 4 李費蒙と李敬洪の図画小説
第5章 一九五〇年代初期における文化政策と雑誌の発展
 1 反共文芸の推進
 2 文化政策の揺れと娯楽誌の流行
 3 雑誌出版とその実態
 4 総合誌を支える暴露ネタ
第6章 反共文壇の分化と通俗図書市場の成立
 1 通俗小説という視座
 2 文化清潔運動
 3 官能的な反共小説:女スパイの色仕掛け
 4 通俗小説に対する需要の高まり
第7章 通俗恋愛小説がジャンルとして確立するまで
 1 通俗恋愛小説の誕生:そこにある誤解
 2 一九五〇年代前半の作家と作品
 3 出版業界の変化
終章 通俗出版が彩った一九五〇年代の台湾文学
1 本書の課題に対するまとめ
2 今後の課題


参考文献
あとがき

書評掲載

「図書新聞」(2022年05月21日号/赤松美和子氏・評)に紹介されました。