新しい政治主体像を求めて
市民社会・ナショナリズム・グローバリズム

A5判 / 396ページ / 上製 / 価格 6,160円 (消費税 560円) 
ISBN978-4-588-62525-1 C3031 [2014年02月 刊行]

内容紹介

近代政治理論では、「人間、国民、市民」という政治主体概念が継承されてきた。しかし、20世紀末から世界秩序が不安定性を増すなか、現状とのずれが生じ始めている。多彩な論者が「市民社会、ナショナリズム、グローバリズム」との関連で従来の概念を再検討し、今を生きる人びとの苦しみや惑いに答える政治学・理論の可能性を探る。

著訳者プロフィール

岡本 仁宏(オカモト マサヒロ)

1955年生まれ。関西学院大学法学部教授(政治哲学・NPO/NGO論)。主な業績:『〈基礎的組織〉と政治統合──M. P. フォレットの研究』滋賀大学経済学部、1986年、「市民社会、ボランティア、政府」立木茂編著『ボランティアと市民社会』晃洋書房、1997年、「『国民』を疑う」『年報政治学2011-I』2011年、『ボランタリズム研究』(編著)1、2、大阪ボランティア協会、2011~2013年、「世論」「パトリオティズム」「国民」「市民社会」古賀敬太編『政治概念の歴史的展開』第1~6巻、晃洋書房、2004~2013年。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 政治主体についての仮説的整理 (岡本仁宏)

第I部 国民を超えて

第1章 政治主体としての世界市民:M・ヌスバウムのcompassion論 (古賀敬太)
第2章 集合的アイデンティティーに関する一試論:ナショナリズム、愛国心、コスモポリタニズム (千葉 眞)

第II部 市民の位相

第3章 市民たちの空間:アテナイ・デモクラシーの歴史的・制度的考察 (的射場敬一)
第4章 政治主体の形成における「自由」の考察:アリストテレス自由論を手掛かりに (荒木 勝)
第5章 民主的政治主体の形成:久野収と小林トミの思想と行動 (寺島俊穂)
第6章 マス・ソサエティにおける政治主体の「市民性」 (山田竜作)
第7章 政治主体としての宗教的市民:ハーバーマスのポスト世俗社会論 (木部尚志)

第III部の前に 問題の深化のために

第8章 政治の「周辺化」や「脱領域化」にどう応えるか (杉田 敦)

第III部 新しい主体の可能性に向けて

第9章 コミュニタリアニズムとコスモポリタニズムをつなぐ「住民」 (菊池理夫)
第10章 環境保護の主体:食料主権を核とする環境的シティズンシップ (丸山正次)
第11章 グローバル・リスク社会における新たなる政治主体 (山崎 望)

[執筆者紹介]*は編者

岡本 仁宏(オカモト マサヒロ) [序章]*

古賀 敬太(コガ ケイタ) [第1章]
1952年生まれ。大阪国際大学現代社会学部教授(政治思想史)。主な業績:『ヴァイマール自由主義の悲劇』風行社、1996年、『カール・シュミットとカトリシズム』創文社、1999年、『近代政治思想における自由の伝統』晃洋書房、2001年、『シュミット・ルネッサンス』風行社、2007年、『政治思想の源流』風行社、2010年、『政治概念の歴史的展開』(編著)第1~6巻、晃洋書房、2004~2013年ほか。

千葉 眞(チバ シン) [第2章]
1949年生まれ。国際基督教大学教養学部教授(西欧政治思想史・政治理論)。主な業績:『アーレントと現代』岩波書店、1996年、『デモクラシー』岩波書店、2000年、『「未完の革命」としての平和憲法』岩波書店、2009年、Living for Jesus and Japan: The Social and Theological Thought of Uchimura Kanzo, co-edited, Eerdmans, 2013ほか。

的射場 敬一(マトイバ ケイイチ) [第3章]
1951年生まれ。国士舘大学政経学部教授(西洋政治思想史)。主な業績:『政治思想史講義』(共著)早稲田大学出版部、1998年、『政治概念のコンテクスト』(共著)早稲田大学出版部、1999年、古賀敬太編著『政治概念の歴史的展開』(共著)第1巻・第4巻・第6巻、2004年、2011年、2013年ほか。

荒木 勝(アラキ マサル) [第4章]
1949年生まれ。岡山大学副学長、岡山大学大学院社会文化科学研究科教授(政治思想)。主な業績:『アリストテレス政治哲学の重層性』創文社、2011年ほか。

寺島 俊穂(テラジマ トシオ) [第5章]
1950年生まれ。関西大学法学部教授(政治哲学)。主な業績:『政治哲学の復権──アレントからロールズまで』ミネルヴァ書房、1998年、『市民的不服従』風行社、2004年、『ハンナ・アレントの政治理論──人間的な政治を求めて』ミネルヴァ書房、2006年、『現代政治とシティズンシップ』晃洋書房、2013年ほか。

山田 竜作(ヤマダ リュウサク) [第6章]
1967年生まれ。創価大学学士課程教育機構准教授(政治理論)。主な業績:『大衆社会とデモクラシー ──大衆・階級・市民』風行社、2004年、Democracy and Mass Society: A Japanese Debate, 学術出版会、2006年、『シティズンシップ論の射程』(共編)日本経済評論社、2010年、「フェミニズムとデモクラシー理論」『政治思想研究』第10号、2010年ほか。

木部 尚志(キベ タカシ) [第7章]
1964年生まれ。国際基督教大学教養学部教授(政治理論)。主な業績:「信仰の論理と公共的理性の相克」『早稲田政治経済学雑誌』第381/382号、2011年、「共同翻訳と公共圏のポリフォニー」『年報政治学 2013-I』2013年、「政治と宗教」古賀敬太編『政治概念の歴史的展開』第5巻、晃洋書房、2013年ほか。

杉田 敦(スギタ アツシ) [第8章]
1959年生まれ。法政大学法学部教授(政治理論)。主な業績:『権力の系譜学』岩波書店、1998年、『権力』岩波書店、2000年、『境界線の政治学』岩波書店、2005年、『政治への想像力』岩波書店、2009年、『政治的思考』岩波新書、2013年ほか。

菊池 理夫(キクチ マサオ) [第9章]
1948年生まれ。南山大学法学部教授(西洋政治思想史・政治理論)。主な業績:『現代のコミュニタリアニズムと「第三の道」』風行社、2004年、『日本を甦らせる政治思想──現代コミュニタリアニズム入門』講談社、2007年、『共通善の政治学──コミュニティをめぐる政治思想』勁草書房、2011年、『ユートピア学の再構築のために──「リーマン・ショック」と「三・一一」を契機として』風行社、2013年ほか。

丸山 正次(マルヤマ マサツグ) [第10章]
1954年生まれ。山梨学院大学法学部教授(政治理論)。主な業績:『環境政治理論』風行社、2006年、Eco-socialism as Politics: Rebuilding the Basis of Our Modern Civilisation(共著)Springer, 2010, 「環境」古賀敬太編『政治概念の歴史的展開』第4巻、晃洋書房、2011年、「社会変革思想としての意識変革エコフェミニズム」『環境思想・教育研究』第6号、2013年ほか。

山崎 望(ヤマザキ ノゾム) [第11章]
1974年生まれ。駒澤大学法学部政治学科准教授(現代政治理論)。主な業績:『来たるべきデモクラシー ──暴力と排除に抗して』有信堂、2012年、『デモクラシーの擁護──再帰化する現代社会で』(共著)ナカニシヤ出版、2011年、『実践する政治哲学』(共編著)ナカニシヤ出版、2011年、「シティズンシップ」古賀敬太編『政治概念の歴史的展開』第6巻、晃洋書房、2013年ほか。

書評掲載

「出版ニュース」(2014年4月中旬号)に紹介されました。