サピエンティア 34
歴史のなかの障害者

四六判 / 354ページ / 上製 / 定価:4,000円 + 税 
ISBN978-4-588-60334-1 C1320 [2014年02月 刊行]

内容紹介

障害者とはどのような主体であるのか。何が障害なのか。歴史的な障害生成のプロセスと社会的背景、さらに、障害を持つといわれる人々に対する認識はどのようなものなのだろうか。本書は、日本、ドイツ、イギリスを対象に、学校、職場、病院、社会事業などにおける障害者の生活の歴史をひも解き、具体的かつ多面的に描きだすことで、現代社会が抱える《共生》の問題を考える。

著訳者プロフィール

山下 麻衣(ヤマシタ マイ)

1974年生まれ。現在,京都産業大学経営学部准教授。専攻は近代日本看護史,日本経済史,日本経営史。主な論文に,「明治期日本における看護婦の誕生――内務省令『看護婦規則』前史」川越修・鈴木晃仁編著『分別される生命――二○世紀社会の医療戦略』(法政大学出版局,2008年);「明治期以降における看護婦資格制度の変遷」『大阪大学経済学』第50巻4号(2001年3月),ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

巻頭言 どんな人間になるかが大切なんだよ(長瀬修)

はじめに(山下麻衣)

第1章 初等教育と知的障害児(山下麻衣)
 東京市尋常小学校の特別学級を事例として
 一 尋常小学校のなかの特別学級
 二 東京市における特別学級設置の背景
 三 東京市における補助学級児童の選定過程と特徴
 四 特別学級における卒業後の進路


第2章 学校と発話障害児(梅原秀元)
 ドイツにおける発話障害とそれをめぐる知とケアの確立
 一 学校と障害
 二 学校における「普通の」子どもと「普通ではない」子ども
 三 デュッセルドルフにおける発話障害児へのケア
 四 「完全/不完全」な身体

【エッセイ1】 神話のなかの障害者(松井彰彦)

第3章 脳病院と精神障害の歴史(鈴木晃仁)
 昭和戦前期の精神病院における患者デモグラフィと治療の構造
 一 〈定義と切断〉と〈内容と構成〉
 二 患者の入退院のパターン
 三 薬剤と治療法
 四 市場・政策・「それで?」

第4章 工業化と障害者(長廣利崇)
 工場法施行令の分析
 一 戦前期日本の障害者は生活に困窮していたのか?
 二 工場法施行令による労働災害補償
 三 工場法施行令と障害の基準
 四 工場法施行令の改正

【エッセイ2】 共活という思想──体験的自分詩「闇の反撃」が生まれるまで(廣瀬浩二郎)

第5章 社会階層と「精神薄弱者」(大谷誠)
 二○世紀前半のイギリスを事例として
 一 「精神薄弱者問題」からの問いかけ
 二 「精神薄弱者政策」とトレッドゴールド医師
 三 トレッドゴールドと上流・中流階級の精神薄弱者
 四 公的管理への抵抗

第6章 社会事業と肢体不自由児(中野智世)
 近代ドイツにおける「クリュッペル」保護事業
 一 「クリュッペル」とは
 二 国内伝道会によるクリュッペル救済事業
 三 整形外科医によるクリュッペル保護事業
 四 慈善と医学のあいだで

【エッセイ3】 部落史で読み解く──もののけ姫に見る賤民・病者・障害者(灘本昌久)
【エッセイ4】 障害者の近世・近代 (小林丈広)

第7章 戦争と障害者の家族(藤原哲也)
 傷痍軍人の妻の視点からの戦後史
 一 傷痍軍人とその妻たち
 二 傷痍軍人と女性の結婚
 三 戦後における傷痍軍人と妻の生活
 四 「傷痍軍人妻の会」の設立と活動
 五 傷痍軍人と妻の戦後史

【エッセイ5】 映画で読み解く障害者──アメリカ合衆国を例に(藤原哲也)

 あとがき
 文献案内
 人名・事項索引

[著者紹介](執筆順) *は編著者

長瀬 修(ナガセ オサム)[巻頭言]
1959年生まれ。現在,立命館大学生存学研究センター招聘研究教員(教授)。専攻は障害学。主な著書に『障害者の権利条約と日本(増補改訂版)』(共編著,生活書院,2012年);Creating a Society for All: Disability and Economy (co-editor, Leeds: Disability Press, University of Leeds, 2012);『障害者の権利条約──国連作業部会草案』(共編著,明石書店,2004年);『障害学を語る』(共編著,スペース96,2000年);『障害学への招待』(共編著,明石書店,1999年),ほか。

山下 麻衣(ヤマシタ マイ)[はじめに,第1章,文献紹介(日本の項)]*

梅原 秀元(ウメハラ ヒデハル)[第2章]
1970年生まれ。デュッセルドルフ大学医学史学科研究員。専攻はドイツ近現代社会史および医療史。主な著書・論文に Gesunde Schule und gesunde Kinder - Schulhygiene in Dusseldorf 1880-1933 (Essen: Klartext-Verlag, 2013); ?Geburt der modernen Schulhygiene - der Breslauer Augenarzt und Schulhygieniker Hermann Cohn (1838-1906),‘ in Bozena Plonska-Syroka / Fritz Dross, Hrsg., Nachbarschaft und Grenze: Medizin, Geschichte und Kultur im Polnisch-Deutsch Dialog (Wroclaw: Oficyna Wydawnicza Arboretum 2010); H. Umehara et al., ?Von der Schizophrenie zum ?Syndrom des zeitweiligen Verlustes der Einheit der Gedanken/des Gefuhls“: Ursachen und Folgen der Umbenennung der Schizophrenie in Japan im Jahre 2002,‘ in Nervenarzt, Bd. 82 (2011),ほか。

松井 彰彦(マツイ アキヒコ)[コラム1]
1962年生まれ。現在,東京大学大学院経済学研究科教授。専攻は,理論経済学,ゲーム理論,障害と経済。主な編著書に,『慣習と規範の経済学──ゲーム理論からのメッセージ』(東洋経済新報社,2002年),『高校生からのゲーム理論』(ちくまプリマー新書,2010年),『障害を問い直す』(編著,東洋経済新報社,2011年),ほか。

鈴木 晃仁(スズキ アキヒト)[第3章]
1963年生まれ。慶應義塾大学経済学部教授。専攻は医学史。主な著書・論文に,Madness at Home: The Psychiatrist, the Patient, and the Family in England, 1820-1860 (Berkeley: University of California Press, 2006); ‘Measles and the Transformation of the Spatio-Temporal Structure of Modern Japan’, Economic History Review, 62 (2009); ‘Smallpox and the Epidemiological Heritage of Modern Japan: Towards a Total History’, Medical History, 55 (2011),などがある。現在は20世紀前半の東京の精神病院の症例誌を利用して,Modernity and Mental Illness in Modernist Tokyo 1920-1945 (仮題) を執筆している。

長廣 利崇(ナガヒロ トシタカ)[第4章,文献紹介(日本の項)]
1976年生まれ。現在,和歌山大学経済学部准教授。専攻は日本経済史・経営史。主な著書・論文に,『戦間期日本石炭鉱業の再編と産業組織──カルテルの歴史分析』(日本経済評論社,2009年);「戦間期日本における高等商業学校の就職斡旋活動」『大阪大学経済学』第63巻1号(2013年6月),ほか。

広瀬 浩二郎(ヒロセ コウジロウ)[コラム2]
1967年生まれ。13歳のときに失明。現在,国立民族学博物館民族文化研究部准教授。専門は日本宗教史,触文化論。主な著書に,『障害者の宗教民俗学』(明石書店,1997年);『さわる文化への招待──触覚でみる手学問のすすめ』(世界思想社,2009年);『万人のための点字力入門──さわる文字から、さわる文化へ』(編著,生活書院,2010年);『さわって楽しむ博物館──ユニバーサル・ミュージアムの可能性』(編著,青弓社,2011年);『さわっておどろく!──点字・点図がひらく世界』(共著,岩波ジュニア新書,2011年),など。

大谷 誠(オタニ マコト)[第5章,文献紹介(イギリスの項)]
1967年生まれ。現在,同志社大学文学部嘱託講師。専攻はイギリス近現代史・医療社会史。主な論文に,「世紀転換期イギリスにおける『精神薄弱者問題』──上流・中流階級と『公』的管理」川越修・鈴木晃仁編著『分別される生命──二○世紀社会の医療戦略』(法政大学出版局,2008年);「知的障害の歴史──イギリスと日本の事例」(山下麻衣と分坦執筆)松井彰彦・川島聡・長瀬修編『障害を問い直す』(東洋経済新報社,2011年),ほか。

中野 智世(ナカノ トモヨ)[第6章,文献紹介(ドイツの項)]
1965年生まれ。現在,京都産業大学経営学部准教授。専攻は社会福祉史,ドイツ近現代史。主な著書に,『福祉』(共編著,近代ヨーロッパの探求⑮,ミネルヴァ書房,2012年);「近代ドイツにおける女性福祉職」赤阪俊一・柳谷慶子編『生活と福祉』(ジェンダー史叢書第8巻,明石書店,2010年);Familienfursorge in der Weimarer Republik. Das Beispiel Dusseldorf (Dusseldorf: Droste Verlag, 2008),ほか。

灘本 昌久(タダモト マサヒサ)[コラム3]
1956年生まれ。現在,京都産業大学文化学部教授。専攻は,日本近代史,部落史。主な著書に,『京都の部落史』全10巻(京都部落史研究所,1983-95年),『「ちびくろサンボ」絶版を考える』(径書房,1990年),『部落の過去・現在・そして…』(共著、阿吽社,1991年),『脱常識の部落問題』(共編、かもがわ出版,1998年),『ちびくろサンボよ すこやかによみがえれ』(径書房,1999年),ほか。

小林 丈広(コバヤシ タケヒロ)[コラム4]
1961年生まれ。現在,奈良大学文学部教授。専攻は日本史学。主な著書に,『明治維新と京都──公家社会の解体』(臨川書店,1998年),『京都町式目集成』(京都市歴史資料館,1999年),『近代日本と公衆衛生──都市社会史の試み』(雄山閣出版,2001年),ほか。

藤原 哲也(フジワラ テツヤ)[第7章,コラム5,文献紹介(アメリカの項)]
1968年生まれ。現在,福井大学医学部教授。専攻は,日本・アメリカ障害者史。主な論文に,「第二次世界大戦期におけるアメリカ合衆国のリハビリテーション対策」『中・四国アメリカ研究』第4号(2009年);‘Japan's other Forgotten Soldiers’, in Christopher Gerteis and Timothy S. George, eds., Japan Since 1945 from Postwar to Post-Bubble (London: Bloomsbury, 2013),ほか。

書評掲載

「図書新聞」(2014年7月19日号、2014年上半期読書アンケート/小松美彦氏・評)

「社会経済史学」(第80巻4号、2015年2月発行/川越敏司氏・評)に紹介されました。

「科学史研究」(2017年1月号/原田玄機氏・評)にて紹介されました。