〈ノヴェル〉の考古学
イギリス近代小説前史

四六判 / 316ページ / 上製 / 定価:3,700円 + 税 
ISBN978-4-588-49028-6 C3097 [2012年10月 刊行]

内容紹介

ルネサンスから18世紀にかけて、ヨーロッパは翻訳の時代だった。本書は、言説の多様性と分散性という存在様態を明確化しようとするフーコーのひそみに倣い、諸ジャンルが内部で角遂・葛藤する18世紀初頭の近代小説において、イギリスの作家たちが置かれていた文学的ミリューの「近似値」を復元し、イギリス近代小説の誕生にいたる見取り図を描くことをこころみる。

著訳者プロフィール

伊藤 誓(イトウ チカイ)

1951年、三重県に生まれる。東京教育大学大学院修士課程修了。京都教育大学、東京学芸大学、大妻女子大学を経て、1991年、東京都立大学人文学部助教授、98年、同教授、現在、首都大学東京大学院人文科学研究科教授、イギリス小説専攻。
著書:『ロレンス文学のコンテクスト』(金星堂)、『スターン文学のコンテクスト』(法政大学出版局)。
共著:『イギリス文学グラフィティ』(愛育社)、『D. H. ロレンス』、『戦後イギリス文学』、『今日のイギリス小説』(以上、金星堂)、『構造主義とポスト構造主義』(研究社)、『世界の文学:ヨーロッパⅠ』、『世界の文学:ヨーロッパⅡ』(以上、朝日新聞社)、『モダンとポストモダン』(岩波書店)、『躍動する言語表象』(開拓社)、『イギリス文学』(自由国民社)。
訳書:『図説イギリス文学史』(共訳、大修館)、D. ロッジ『バフチン以後』、F. イングリス『メディアの理論』(共訳)、E. リード『旅の思想史』、M. ホルクウィスト『ダイアローグの思想』、N. フライ『大いなる体系』、A. フレッチャー『思考の図像学』、J. H. ミラー『読むことの倫理』(共訳)、G. スタイナー『言葉への情熱』、B. アダム『時間と社会理論』(共訳)、R. バートレット『ヨーロッパの形成』(共訳)、L. ハイド『トリックスターの系譜』(共訳)、D. R. ヴィラ『政治・哲学・恐怖』(共訳)、W. イーザー『解釈の射程』(以上、法政大学出版局)、G. スタイナー『私の書かなかった本』(共訳、みすず書房)。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 はしがき

序論
一 一八世紀イギリス小説のコンテクスト
二 なぜ「考古学」か

第1章 小説の〈起源〉をめぐって
一 ワット説への疑問
二 古代ロマンス/小説を生み出した時代
三 古代ギリシャ・ロマンス/小説の特徴
四 古代ロマンス/小説のインターテクスチュアリティ

第2章 古代ロマンス/小説の翻訳

第3章 ロマンスの変容
一 叙事詩、武勲詩から韻文ロマンスへ
二 韻文ロマンスから散文ロマンスへ
三 ロマンス批判によるロマンス再活性化
四 ノヴェッラ、ヌーヴェルの登場へ

第4章 ピカレスク小説再考
一 ピカロ的人物像
二 スペイン・ピカレスク小説
三 ピカロとしての狐ルナール
四 ファブリオのノヴェッラ/ヌーヴェル化
五 スペイン・ピカレスク小説の先駆けの英訳
六 ノヴェッラ的「例話」から(強引に)引き出される「教訓」
七 ノヴェッラ、ヌーヴェルの盛期
八 ドイツのピカレスク小説
九 フランス・ピカレスク小説の先駆け

第5章 〈ノヴェル〉への胎動──〈散文〉の勃興(一)
一 散文ロマンスへ──識字率の問題
二 中世フェミニズムの消長
三 ルネサンス人文主義の残照
四 イギリスのピカロたち

第6章 〈ノヴェル〉のための技法──〈散文〉の勃興(二)
一 「性格描写」と「語り」の技術
二 イギリスのロマンスの変容
三 商人階級の〈声〉
四 分類を拒む作品と多数多様な翻訳

第7章 叙事詩、ロマンス、〈ノヴェル〉
一 叙事詩の自己完結性
二 ロマンスに内在するアンビヴァレンス
三 牧歌ロマンス、騎士道ロマンス、英雄ロマンス、近代語訳ギリシャ・ロマンス/小説
四 英訳英雄ロマンスから「アマトリー・ノヴェラ」へ
五 「ロマンス・ノヴェル/ノヴェル・ロマンス」としての「小説(ノヴェル・ロマン)」

 註記
 初出誌一覧
 あとがき
 索引

関連書籍

伊藤誓著『スターン文学のコンテクスト』