サピエンティア 57
支配と抵抗の映像文化
西洋中心主義と他者を考える

A5判 / 544ページ / 上製 / 価格 6,490円 (消費税 590円) 
ISBN978-4-588-60357-0 C1336 [2019年01月 刊行]

内容紹介

ハリウッド映画の西部劇、ミュージカル、帝国映画の各ジャンルについて、人種的な配役や植民地主義言説、ジェンダーといった文化表象の問題を考察。人種主義を批判するだけでなく、芸術的・文化的・政治的な代案を示し、第三世界の映画やラップビデオ、先住民族の番組まで幅広い非西洋メディアについても論ずる。膨大な作品をもとに紡がれる学際的研究に、知的興奮を覚えずにはいられない。

著訳者プロフィール

エラ・ショハット(ショハット エラ)

(Ella Shohat)
ニューヨーク市立大学およびニューヨーク大学の教授。イラクに出自を持つアラブ系ユダヤ人。中東のメディア・映画研究を専門とする。主な著書にIsraeli Cinema: East/West and the Politics of Representation (Univ. of Texas Press, 1989); Taboo Memories, Diasporic Voices (Duke Univ. Press, 2006)など。ロバート・スタムとの共著は本書のほか、Multiculturalism, Postcoloniality and Transnational Media (Rutgers Univ. Press, 2003); Flagging Patriotism: Crises of Narcissism and Anti-Americanism (Routledge, 2007); Race in Translation: Culture Wars Around the Postcolonial Atlantic (NYU press, 2012)がある。

ロバート・スタム(スタム ロバート)

(Robert Stam)
ニューヨーク大学の映画学教授。中南米のとくにブラジル映画を専門とする。主な著書にLiterature through Film: Realism, Magic and the Art of Adaptation (Blackwell, 2005); Francois Truffaut and Friends: Modernism, Sexuality, and Film Adaptation (Rutgers, 2006)など。日本語訳としては、『転倒させる快楽――バフチン、文化批評、映画』(浅野敏夫訳、法政大学出版局、2002年)、『映画記号論入門』(共著、松柏社、2006年)がある。

早尾 貴紀(ハヤオ タカノリ)

1973年生まれ。現在、東京経済大学准教授。専攻は社会思想史。
主要業績:単著に『ユダヤとイスラエルのあいだ――民族/国民のアポリア』(青土社、2008年)、『国ってなんだろう?』(平凡社、2016年)、共編書に『シオニズムの解剖──現代ユダヤ世界におけるディアスポラとイスラエルの相克』(平凡社、2011年)、『ディアスポラから世界を読む──離散を架橋するために』(明石書店、2009年)、共訳書に、ジョナサン・ボヤーリン/ダニエル・ボヤーリン『ディアスポラの力──ユダヤ文化の今日性をめぐる試論』(平凡社、2008年)、サラ・ロイ『ホロコーストからガザへ──パレスチナの政治経済学』(青土社、2009年)、イラン・パペ『パレスチナの民族浄化ーーイスラエル建国の暴力』(法政大学出版局、2017年)、ハミッド・ダバシ『ポスト・オリエンタリズムーーテロの時代における知と権力(作品社、2018年)などがある。

内田(蓼沼) 理絵子(ウチダ タデヌマ リエコ)

1973年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科共生文明学専攻博士後期課程修了。専攻は中世セファルディーム文学および反ユダヤ・フォークロア。

片岡 恵美(カタオカ メグミ)

1972年生まれ。現在、神戸学院大学、羽衣国際大学の非常勤講師。関西大学大学院文学研究科博士課程後期課程修了。博士(文学)。専攻は東西交渉史(とくにオスマン朝外交史)。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章

第1章 ヨーロッパ中心主義から多中心主義へ

西洋という神話/植民地主義の遺産/人種と人種主義/第三世界/第三世界の映画/第四世界と先住民族メディア/ポストコロニアルとハイブリッド/多中心的多文化主義

第2章 植民地主義的言説の形成

ギリシャ、すべての始まりの地/レコンキスタから征服へ/コロンブス論争/修正主義の映画と五〇〇年祭/奴隷制と抵抗運動/反逆者の声/啓蒙思想と進歩の二律背反

第3章 帝国という想像物

ナショナル・アイデンティティの形成/科学と見世物としての映画/帝国の投影/理論枠組みとしての西部劇/近年の帝国映画/ポストモダンの戦争

第4章 帝国の比喩

処女地のアダムたち/「未知の大国」の地図をつくる/暗黒大陸の発掘/ミイラとエジプト学/レイプと救出のファンタジー/ハレムという想像物/砂漠のオデッセイ

第5章 ステレオタイプ、リアリズム、そして表象をめぐる闘い

リアリズムの問題/表象の重荷/配役をめぐる人種の政治学/支配の言語学/ハリウッド作品と人種/ステレオタイプの範囲/視点、発信、焦点化/映画的・文化的な媒介/言説の編成

第6章 〈関係性におけるエスニシティ〉

隠されたエスニシティ/存在・不在の弁証法的対立/エロチックな寓意/善き隣人と越境者/アメリカ的シンクレティズムの演出/文化の相互照明

第7章 第三世界主義の映画

植民地史の書き直し/飢えの美学/第三の映画と闘うドキュメンタリー/不能の寓意/第三世界主義の再帰性/ナショナルを超えて

第8章 抵抗の美学

古代に起源を持つオルタナティヴな美学/カーニバレスクな転倒/モダニズムの人食い/芸術的戦略としてのシンクレティズム/脱身体化の詩学/見た目のパラダイム/メディアの柔術

第9章 ポストモダン時代における多文化主義のポリティクス

大衆文化とポリティカル・コレクトネス/自己表象とアイデンティティ・ポリティクス/交渉する観客性

訳者あとがき

原注

参考文献/人名・グループ名索引/作品名索引

書評掲載

「出版ニュース」(2019年3月下旬号)に紹介されました。

「週刊金曜日」(1228号、2019年4月12日発行/伊高浩昭氏・評)に紹介されました。

「読書人」(2019年5月3日号/伊高浩昭氏・評)に紹介されました。

「図書新聞」(2019年6月8日号/久保豊氏・評)に紹介されました。

「羽衣国際大学現代社会学部研究紀要」(第9号、2020年3月/片岡恵美氏・評)に紹介されました。

「映像学」(104号、2020年刊行/斉藤綾子氏・評)に紹介されました。

関連書籍

『転倒させる快楽』
ロバート・スタム:著
『映画と経験』
ミリアム・ブラトゥ・ハンセン:著
『差異』
ミシェル・ヴィヴィオルカ:著
『文化を転位させる』
ウマ・ナーラーヤン:著
『言葉と爆弾』
ハニフ・クレイシ:著
『洋服を着る近代』
ロバート・ロス:著