生の力を別の仕方で思考すること
ジャック・デリダにおける生死の問題

A5判 / 286ページ / 上製 / 価格 4,400円 (消費税 400円) 
ISBN978-4-588-15114-9 C1010 [2021年02月 刊行]

内容紹介

デリダにとって生の問題、あるいは生死の問題とはいかなるものであったか。デリダによるフロイトおよびベンヤミンの読解を手がかりに、生の欲動と死の欲動の拮坑としての〈生-死〉概念、そして死をそのなかに含む時間的残存としての〈生き延び〉の概念を分析し、言語論、精神分析から翻訳論、民主主義論へとその射程を拡張しつつデリダが思考しつづけた〈可能な限り強烈な生〉の有り様を明らかにする。

著訳者プロフィール

吉松 覚(ヨシマツ サトル)

1987年生。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)。現在、立命館大学客員協力研究員。専門はフランス思想、哲学。訳書にマーティン・ヘグルンド『ラディカル無神論──デリダと生の時間』(共訳、法政大学出版局、2017年)、論文に「フロイトの読者、デリダにおける時間、生、リズム」(『関西フランス語フランス文学』第25号、2019年)、「『自由エネルギー』をめぐるフロイトの誤読?──デリダとラプランシュの『快原理の彼岸』読解から」(『あいだ/生成』第10号、2020年)など。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 論

第一部 「生死」概念の形成 一九六七─一九八〇年

第一章 フロイトの読者、デリダにおける時間、生、リズム
 はじめに
 一 知覚の不連続性と周期性──『心理学草案』
 二 フロイトにおける認識論と単位時間──『快原理の彼岸』
 三 刺激の不連続性と時間表象──『マジックメモについての覚書』
 四 間隔化と時間性──「フロイトとエクリチュールの舞台」
  四──一 純粋な時間化としての間隔化──デリダによる『心理学草案』読解
  四──二 周期的な知覚の初期化と時間──デリダによる「マジックメモについての覚書」読解
 五 リズムと生き延び
 六 おわりに
第二章 開放系としての生命──デリダの『生命の論理』読解から
 はじめに
 一 プログラムと生気論/機械論
 二 選択としての生殖と力への意志
 三 有性生殖と死
 四 生命とテクスト──自己言及性・自己触発・自己増殖
  四──一 『生死』講義におけるポンジュ「寓話」
  四──二 デリダの「寓話」解釈──「プシュケー」における読解
  四──三 ジャコブにおける遺伝子情報のメッセージとデリダによる解釈
  四──四 テクスト・生命・モデル
 五 生命の論理としての生殖とエネルギー、テクスト
 六 おわりに
第三章 「自由エネルギー」をめぐるフロイトの誤読?──デリダとラプランシュの『快原理の彼岸』読解から
 はじめに
 一 「思弁する」におけるデリダの読解姿勢
 二 フロイトの「カードの取り違え」?──ラプランシュ『精神分析における生と死』
  二──一 フロイトにおけるゼロ原理と恒常原理──ラプランシュによる解釈
  二──二 「はなはだしい無礼さ」──フロイトにおけるエネルギー論の問題
 三 フロイトにおける「拘束」──デリダによる読解
 四 生死の運動としての拘束/脱拘束

第二部 生死概念の展開 一九八〇─二〇〇三年

第四章 翻訳・生き延び・正義──デリダのベンヤミン読解から
 はじめに
 一 伝承による生き延びと生──デリダの「翻訳者の使命」読解と生き延び概念
 二 デリダの決断論の由来──『法の力』を中心に
 三 決定に伴う三つのアポリア
 四 理念と正義
 五 法、暴力、約束──『法の力』第二部における『暴力批判論』読解から
 六 おわりに
第五章 生(の力)を別の仕方で思考すること?──デリダの民主主義論における自己免疫性について
 はじめに
 一 デリダにおける自己免疫性
 二 民主主義の自殺的傾向
 三 自己性そのものの破壊──『ならず者たち』におけるデリダの死の欲動理解
 四 来たるべき民主主義と闘技民主主義──デリダとムフ
 五 生の力を別の仕方で思考すること?──まとめにかえて

結 論

あとがき
文献表
索引

書評掲載

「週刊読書人」(2021年5月7日号/廣瀬浩司氏・評)に紹介されました。