表象のアリス
テキストと図像に見る日本とイギリス

第39回日本児童文学学会特別賞受賞
A5判 / 462ページ / 上製 / 定価:5,800円 + 税 
ISBN978-4-588-49509-0 C1090 [2015年04月 刊行]

内容紹介

ルイス・キャロルが創造した少女アリスは、その誕生から今日まで、挿絵画家や翻訳者たちによってどのように描かれてきたか。原作のノンセンス世界を見事に解釈・構築したテニエルの挿画や、明治以降の日本の翻訳・翻案作品に現れた多様な少女像を、アリス図像研究の第一人者が初めて詳細に比較分析した労作。『不思議の国のアリス』150周年を記念して刊行、図版多数!

著訳者プロフィール

千森 幹子(チモリ ミキコ)

帝京大学外国語学部教授。英国イーストアングリア大学大学院で博士号(Ph.D.)を取得。大阪明浄女子短期大学講師・助教授、ケンブリッジ大学クレアホール学寮客員フェロー、山梨県立大学国際政策学部教授を経て、2014年から現職。専門領域は18世紀〜19世紀イギリス小説、日英比較文学、図像研究、翻訳研究。
主な著書に、Sense in Nonsense: The Alice Books and Their Japanese Translators and Illustrators(単著)(Ph.D.論文、2003)、『不思議の国のアリス〜明治・大正・昭和初期邦訳本復刻集成』(編集解説、エディションシナプス、2009)、Tove Jansson Rediscovered(共著、 Cambridge Scholars Publishing, 2007)、 Illustrating Alice(共著、 Artists’ Choice Edition, 2013)、『図説 翻訳文学総合事典 第5巻 日本における翻訳文学(研究編)』(共著、大空社、2009)、『十八世紀イギリス文学研究[第4号]─交渉する文化と言語』(共著、開拓社、2010)など。主な論文に、Shigeru Hatsuyama’s Unpublished Alice Illustrations: A Comparative Study of Japanese and Western Art(The Carrollian: The Lewis Carroll Journal, No. 4, 1999)、“Tenkei Hasegawa’s Kagami Sekai:The First Japanese Alice Translation”(The Carrollian, No. 6, 2000)などがある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

プロローグ
多様なアリス/本書の概要/先行研究/本書の特徴と独創性/アリス図像/アリス邦訳/イギリスのアリスから日本のアリスへ──受容と融合

第一部 キャロルの内と外なるアリス

第一章 キャロルと二つの『アリス』物語
一・一 作家ルイス・キャロル
キャロルの感情生活/キャロルの女性観/キャロルと子ども/キャロルとアリス姉妹/アリスたちとの別離/キャロルの転機/晩年のキャロル

一・二 アリス
アリスとは/キャロルの内なるアリス(アリスの変化とメタモルフォーシス)/キャロルの外なるアリス/女性の登場人物

一・三 ヴィクトリア時代のアリスたちへ
読者への問いかけ/アリスの未来/ヴィクトリア時代の子どもたちへのメッセージ

第二章 挿絵画家キャロルとテニエル──『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』
二・一 挿絵画家ルイス・キャロル
キャロルと挿絵/『アリス』以前に描かれたキャロルの挿絵/『アリスの地下の冒険』

二・二 挿絵画家キャロルとテニエル
キャロルの影響

二・三 ジョン・テニエルの『アリス』
ヴィクトリア時代のイラストレーター/テニエル、キャロルそして『アリス』/テニエルのヴィクトリア解釈

第二部 オリエントと『アリス』

第三章 オリエントと『アリス』
三・一 背景研究──言語学的文化的観点から見た日英比較
ジャンルと言語/日本の翻訳者がであう困難/言語と世界観/ノンセンス

三・二 受容の文脈─読者層
明治から大正にいたる文化的社会的背景/明治から大正期にいたる教育制度の変遷/変容する児童イメージと児童観/子どものイメージとその時代的変遷/児童文学における少女イメージ・少女観の誕生/明治時代から大正時代にいたる児童文学

三・三 西洋と日本の融合─幻に終わった初山滋画『不思議國のアリス』
出版されずに終わった初山滋の『不思議國のアリス』図像発掘/ジョン・テニエルの「アリスと子豚」/アーサー・ラッカムのアリス─思春期の少女の系譜/チャールズ・ロビンソンとメイベル・ルーシー・アトウェル─かわいさの系譜/初山滋の『アリス』図像/初山滋の世界──日本と西洋の融合

第四章 初期『アリス』翻案と翻訳(一八九九─一九一二)
四・一 日本最初の『アリス』翻訳──長谷川天溪の『鏡世界』

四・二 明治の初期『不思議の国のアリス』翻訳
初期の『不思議の国のアリス』翻訳/翻訳者の『不思議の国のアリス』解釈/翻訳? それとも翻案?/日本の『不思議の国のアリス』翻訳に見る因習と道徳/日本化/誤訳/言葉遊びと造語/日本の少女アリス

四・三 明治期の『不思議の国のアリス』挿絵(一九〇八─一九一二)
『アリス物語』の川端昇太郎の挿絵/芳村椿花画『子供の夢』と椿花山人画『お正月お伽噺』/『愛ちやんの夢物語』

第五章 大正児童雑誌における『アリス』邦訳
五・一 昭和初期の絵雑誌における『アリス』邦訳
初期絵雑誌と『アリス』邦訳/『幼年の友』掲載の『フシギナ クニ』/『日本幼年』に掲載された『アリス物語』

五・二 児童雑誌『赤い鳥』におけるアリス翻訳『地中の世界』
雑誌『赤い鳥』/『赤い鳥』の絵画/鈴木三重吉の『地中の世界』/『地中の世界』のイラスト/清水良雄と『地中の世界』/清水良雄の世界/おわりに

五・三 『鏡國めぐり』
『鏡國めぐり』翻訳/岡本帰一の『鏡國めぐり』挿絵/むすび

第六章 一九二〇年から一九三三年の『アリス』翻訳
六・一 大正末から昭和初期にかけての『アリス』翻訳

六・二 『ふしぎなお庭 まりちやんの夢の國旅行』
鷲尾知治編『まりちやんの夢の國旅行』/斎田喬の挿絵/むすび

六・三 『アリス物語』(海野精光口絵、平澤文吉表紙/菊池寛・芥川龍之介共訳)
プロローグ/『アリス物語』のイラスト/菊池寛・芥川龍之介共訳『アリス物語』

六・四 『アリス』とジェンダー──棟方志功の『アリス』図像
棟方志功/棟方とテニエル/棟方芸術/棟方のアリスと日本美術/棟方のアリス図像の独自性/棟方志功と初山滋/おわりに

エピローグ──現在のアリス
子ども期と思春期/フロイト解釈/キャロルにとっての思春期/第二次世界大戦以降の多様な解釈/女性の時代/「かわいい」アリス/戦後の翻訳──センスの崩壊の時代/二一世紀のアリス研究──視覚表象研究の未来

あとがき

初出一覧
図版リスト
参考文献
索引

書評掲載

「出版ニュース」(2015年6月上旬号)に紹介されました。

「愛媛新聞」「徳島新聞」「佐賀新聞」(2015年6月14日付)、「山梨日日新聞」(2015年6月21日付)、「山形新聞」(2015年6月28日付)、「信濃毎日新聞」(2015年8月23日付)に紹介されました。

「朝日新聞」(2015年12月27日付、書評委員が薦める〈今年の3点〉/五十嵐太郎氏・評)に紹介されました。

関連書籍

『ルイス・キャロル』
J.ガッテニョ:著
『意味の論理学』
G.ドゥルーズ:著