ガリヴァーとオリエント
日英図像と作品にみる東方幻想

A5判 / 424ページ / 上製 / 定価:5,200円 + 税 
ISBN978-4-588-49512-0 C1090 [2018年03月 刊行]

内容紹介

『ガリヴァー旅行記』英語版テキストを飾る挿絵には、ヨーロッパ植民地帝国の拡大につれて、日本・中国・イスラムを中心としたオリエンタリズムの表象が前面に現れる。英仏の挿絵画家たちのジャポニズムや植民地幻想に初めて詳細に光をあてるとともに、原作を独自に翻訳・翻案した明治以降の日本の児童文学作家・挿画家による模倣/創造の軌跡をも丹念に跡づける独創的研究。図版多数!

著訳者プロフィール

千森 幹子(チモリ ミキコ)

帝京大学外国語学部教授。英国イーストアングリア大学大学院で博士号(Ph.D.)を取得。大阪明浄女子短期大学講師・助教授、ケンブリッジ大学クレアホール学寮客員フェロー、山梨県立大学国際政策学部教授を経て、2014年から現職。専門領域は18世紀〜19世紀イギリス小説、日英比較文学、図像研究、翻訳研究。
主な著書に、『表象のアリス──テキストと図像に見る日本とイギリス』(第39回日本児童文学学会特別賞受賞、法政大学出版局)、Sense in Nonsense: The Alice Books and Their Japanese Translators and Illustrators (単著)(Ph.D.論文、2003)、『不思議の国のアリス〜明治・大正・昭和初期邦訳本復刻集成』(編集解説、エディションシナプス、2009)、Tove Jansson Rediscovered (共著、Cambridge Scholars Publishing, 2007)、Illustrating Alice (共著、Artists’ Choice Edition, 2013)、『図説 翻訳文学総合事典 第5巻 日本における翻訳文学(研究編)』(共著、大空社、2009)、『十八世紀イギリス文学研究[第4号]──交渉する文化と言語』(共著、開拓社、2010)など。主な論文に、Shigeru Hatsuyama’s Unpublished Alice Illustrations: A Comparative Study of Japanese and Western Art(The Carrollian: The Lewis Carroll Journal, No. 4, 1999)、“Tenkei Hasegawa’s Kagami Sekai:The First Japanese Alice Translation”(The Carrollian, No. 6, 2000)などがある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

プロローグ
『ガリヴァー旅行記』とオリエンタリズム/本書の概要/本書の独創性/文学テキストと図像研究/先行研究

第一部 英版『ガリヴァー旅行記』とオリエント

第一章 『ガリヴァー旅行記』の位相

一・一 風刺文学・児童文学としての『ガリヴァー旅行記』の位相
『ガリヴァー旅行記』の多領域性・多義性/子どものための『ガリヴァー旅行記』/児童文学としての『ガリヴァー旅行記』の魅力

一・二 英国におけるオリエント観とオリエント受容
ヨーロッパにおけるオリエントへの関心/日本への関心/イギリスの植民地政策と万国博覧会/ジャポニズム

一・三 英版図像におけるオリエント表象──先行研究と本書

第二章 『ガリヴァー旅行記』のオリエント描写と風刺

二・一 テキストにおけるオリエント描写

二・二 『ガリヴァー旅行記』と近代科学
はじめに/近代科学/『ガリヴァー旅行記』と科学風刺/スウィフトの人間観・理性観/スウィフトの科学風刺に含まれる警告/まとめ

二・三 『ガリヴァー旅行記』と医学
はじめに/スウィフトとストラルドブラグ/ストラルドブラグのソースと先行研究/ストラルドブラグとは/ストラルドブラグ風刺の矛先/ストラルドブラグにこめた警告/風刺の意味/むすび

第三章 英版『ガリヴァー旅行記』図像とオリエント表象

三・一 『ガリヴァー旅行記』図像史とオリエント表象

三・二 『ガリヴァー旅行記』図像における中東描写

三・三 『ガリヴァー旅行記』図像における中国表象

三・四 『ガリヴァー旅行記』図像における日本表象

第四章 英版『アラジン』図像にみるオリエント

四・一 オリエントイメージの混在と融合──日本表象を中心として
はじめに/『アラビアンナイト』と『アラジンと魔法のランプ』/アラビアンナイト『アラジン』画像におけるオリエント表象の系譜/日本イメージ──女性、男性、装飾品そして日本の美術技法

四・二 『ガリヴァー旅行記』と『アラジン』におけるオリエント表象
『ガリヴァー』と『アラジン』における日本表象/むすび

第二部 『ガリヴァー旅行記』邦訳と日英図像

第五章 明治期の邦訳と図像

五・一 はじめに
日本の『ガリヴァー旅行記』

五・二 明治期の翻訳(大人用の翻訳)
『ガリヴァー旅行記』翻訳史

五・二・一 初訳 片山平三郎譯『繪本 鵞瓈皤児回島記』(一八八七年)

五・二・二 大久保常吉編譯・服部誠一校閲『南洋漂流 大人國旅行』(一八八七年)

五・二・三 松原至文・小林梧桐共譯『ガリヴァー旅行記』(一九〇九年)
日本最初の平易な完全翻訳/風刺作品/まとめ

五・三 明治の翻訳図像
『鵞瓈皤児回島記』挿絵/大久保常吉編譯『南洋漂流 大人國旅行』挿絵/島尾岩太郎譯『政治小説 小人國発見録』挿絵/松浦政恭譯『小人島大人島抱腹珍譚』挿絵/松原至文・小林梧桐共譯『ガリヴァー旅行記』挿絵/吉岡向陽編『大艦隊の捕獲』鰭崎英朋画/近藤敏三郎譯『ガリヴァー旅行記 小人國大人國』挿絵/風浪生譯『ガリヴァー小人島大人國漂流記』挿絵/まとめ

五・四 明治の児童文学翻案──巌谷小波『小人島』『大人國』(一八九九年)
はじめに/少年教育とポストコロニアリズム──帝国主義教育と立身出世主義/巌谷小波と帝国主義教育と立身出世主義/『世界お伽噺』/『ガリヴァー旅行記』翻訳史における巌谷翻案の位置づけ/巌谷小波の『小人島(ガリバア島廻上編)』と『大人國(ガリバア島廻下編)』

五・五 『小人島』と『大人國』の挿絵
海外のイラストの影響/筒井年峰挿絵のオリジナリティー/まとめ

第六章 大正期の邦訳と図像

六・一 はじめに

六・二 大正雑誌『少年少女譚海』の鹿島鳴秋文、初山滋挿絵「ガリバー譚」(一九二〇年)
鹿島鳴秋「ガリバー譚」の画家初山滋/初山滋の「ガリバー譚」図像

六・三 大正雑誌『赤い鳥』の野上豊一郎文、清水良雄・深澤省三絵「馬の國」(一九二〇年)
『赤い鳥』と『ガリヴァー旅行記』/野上豊一郎の「馬の國」/「馬の國」と清水良雄の絵画/清水の白黒挿絵/深澤省三の挿絵/まとめ

六・四 平田禿木譯・岡本帰一画『ガリバア旅行記』(一九二一年)
平田禿木譯『ガリバア旅行記』/平田禿木の邦訳/『ガリバア旅行記』の挿絵画家岡本帰一/岡本帰一の『ガリバア旅行記』図像

六・五 濱野重郎著『ガリバー旅行記』(一九二五年)
濱野重郎著『ガリバー旅行記』/濱野重郎著『ガリバー旅行記』の挿絵──挿絵の西洋版ソースの発掘/ゴードン・ブラウンの挿絵/濱野版におけるブラウンの図像/むすび

第七章 昭和初期から戦前までの邦訳と図像

七・一 昭和初期の絵雑誌『幼年俱楽部』における『ガリヴァー旅行記』邦訳二種
  ──巌谷小波文・本田庄太郎絵「小人島」「大人國」と村岡花子文・井上たけし絵「小人トガリバー」
『幼年俱楽部』における『ガリヴァー』邦訳/先行研究/『幼年俱楽部』/巌谷小波の「小人島」と「大人國」/挿絵画家本田庄太郎/本田庄太郎の『ガリヴァー』挿絵/本田庄太郎の『ガリヴァー』挿絵の独自性/村岡花子文・井上たけし絵「小人トガリバー」/「小人トガリバー」の挿絵画家井上たけし/まとめ

七・二 初山滋のもう一冊の『ガリヴァー』挿絵(一九二九年)──初山滋とラッカム

七・三 大正末から昭和初期にかけての『ガリヴァー』表紙と外函
中村祥一譯『ガリヴァ旅行記』(一九一九年)/池田永治装幀『ガリバー旅行記』(一九二五年)/小西重直・石井蓉年撰『ガリバー旅行記』(一九三四年)

七・四 西条八十文・吉邨二郎絵『ガリバア旅行記 小人島物語』(一九三八年)
講談社の『世界お伽噺』/吉邨二郎絵『ガリバア旅行記 小人島物語』挿絵

七・五 まとめ

エピローグ
オリエンタリズムと「ガリヴァー」/第二次世界大戦終結までの『ガリヴァー』邦訳/邦訳図像/将来の展望

あとがき


初出一覧
図版リスト
参考文献
索 引

関連書籍

『表象のアリス』
千森 幹子:著