叢書・ウニベルシタス 1055
我々みんなが科学の専門家なのか?〈新装版〉

四六判 / 230ページ / 上製 / 価格 3,520円 (消費税 320円) 
ISBN978-4-588-14083-9 C1330 [2024年01月 刊行]

内容紹介

専門家は安全だと言うのに、不安になったり、専門家がリスクを説明しても、それでは市民に納得してもらえないのは、何故か。単純で極端な立場の対立図式ではなく、価値観の多様性を維持しつつ様々な場面で知識を深め判断形成に参加するために、我々は科学技術にどう向き合えばよいのか。科学論の第一人者が、原発、気候変動、ワクチン接種など、特に日常生活に関わる論争での事例とともに、「専門知」の適切な捉え方を提言する。

著訳者プロフィール

ハリー・コリンズ(コリンズ ハリー)

ハリー・コリンズ(Harry Collins)
1943年生まれ。イギリスの科学社会学者。2012年にイギリス学士院フェローに選出。現在、ウェールズのカーディフ大学特別栄誉教授。かつて、バース大学の教授職を務め、「バース学派」と呼ばれる「科学的知識の社会学」の研究者グループの中心を担った。現在は、専門知論を中心とした科学論の「第三の波」の提唱者として著名で、重力波物理学コミュニティについての研究でも知られる。邦訳された著作に、『民主主義が科学を必要とする理由』(R. エヴァンズとの共著、鈴木俊洋訳、法政大学出版局、2022年)、『専門知を再考する』(R. エヴァンズとの共著、奥田太郎監訳、和田慈、清水右郷訳、名古屋大学出版局、2020年)、『解放されたゴーレム――科学技術の不確実性について』(T.ピンチとの共著、村上陽一郎、平川秀幸訳、ちくま学芸文庫、2020年)、『七つの科学事件ファイル――科学論争の顚末』(T.ピンチとの共著、福岡伸一訳、化学同人、1997年)などがある。

鈴木 俊洋(スズキ トシヒロ)

鈴木 俊洋(スズキ トシヒロ)
1968年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程修了。博士(学術)。現在、崇城大学総合教育センター教授。主な著作に、『数学の現象学――数学的直観を扱うために生まれたフッサール現象学』(法政大学出版局、2013年)、『理系のための科学技術者倫理――JABEE基準対応』(共著、丸善出版、2015年)、『岩波講座 哲学05 心/脳の哲学』(共著、岩波書店、2008年)など。訳書に、H. コリンズ+R.エヴァンズ『民主主義が科学を必要とする理由』(法政大学出版局、2022年)、M. クーケルバーク『AIの倫理学』(共訳、丸善出版、2020年)、P.-P. フェルベーク『技術の道徳化――事物の道徳性を理解し設計する』(法政大学出版局、2015年)などがある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序   専門知の危機の高まり
    クライメイトゲート事件〔気候研究ユニット・メール流出事件〕

第一章 世界が感じていることと学者たち
    中間的なまとめ

第二章 専門家
    専門知の諸類型
    専門知の表

第三章 市民の懐疑論
    集団的活動としての科学と暗黙知

第四章 市民の警笛鳴らし
    ワクチン反対論者

結論  我々みんなが専門家なのか?
    ユビキタス専門知
    スペシャリスト専門知
    メタ専門知
    デフォルト専門知
    まとめ

訳注
訳者あとがき
参考文献
索引

関連書籍

『技術の道徳化』
ピーター=ポール・フェルベーク:著
『社会的なものを組み直す』
ブリュノ・ラトゥール:著
『核の脅威』
G.アンダース:著
『危険社会』
U.ベック:著